研究課題
研究代表者は、鳥類の視床下部から新規の分泌性小タンパク質であるNPGLを発見している。哺乳類のヒト、ラット、マウスなどでもNPGLのホモログ遺伝子は発現しており、摂食行動やエネルギー代謝調節に関与していることを見出している。しかしながら、NPGLの生理的意義を解明するためには様々な外部環境に応じたNPGL遺伝子発現の変動や生理機能の解析が必要と考えた。特に、ラットやマウスで得ている先行結果から、摂食行動の日内リズム変動の変化をNPGLが引き起こす可能性が示唆されている。そこで、サーカディアンリズムや季節変動の研究分野で顕著な業績を上げており、また、古くからの共同研究者であったKriegsfeld教授のラボでNPGLの生理機能を解明する国際共同研究を行うこととした。具体的には、短日・長日環境でメラトニンなどのホルモンの影響を顕著に受けるハムスターを実験材料に用い、NPGL遺伝子の発現変動を解析した。そのために、平成28年度は主に2種類のハムスター(シリアンハムスター及びシベリアンハムスター)でのNPGL遺伝子のクローニングと脳内発現部位の形態学的解析を行った。cDNAクローニングとin situハイブリダイゼーション法によるmRNA発現細胞を検出することができ、本年度の実験計画を達成した。特に、ハムスターのNPGLの一次構造はラットやマウスなどの他の哺乳類と比較しても保存性が高く、哺乳類において重要な生理機能を担っていることが考えられる。
2: おおむね順調に進展している
渡航後、しらばく研究倫理や施設利用の講習や各種トレーニングに時間を取られ、研究着手が遅れた。しかしながら、その後、渡航先の海外研究者及びラボメンバーの援助もあり、当初予定した研究を遂行することができた。
現在、2種類のハムスター(シリアンハムスター及びシベリアンハムスター)を3ヵ月間短日及び長日条件下で飼育し、NPGLが発現している視床下部領域でのNPGL mRNA発現量を解析しようとしている。平成29年度はこれらの解析を進めると同時に、摂食行動や体重変動なども併せて解析を進めていく計画でいる。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件)
Endocrinology
巻: 158 ページ: 1120-1129
doi: 10.1210/en.2017-00064.