研究代表者は、鳥類の視床下部から新規の分泌性小タンパク質であるNPGLを発見している。哺乳類のヒト、ラット、マウスにおいてもNPGLのホモログ遺伝子の存在を明らかにしている。ニワトリやマウスにおいて、体重増加や摂食行動に影響を与えることをこれまでに明らかにしているが、NPGLの生理的意義を明らかにするまでには至っていなかった。ラットやマウスの解析から、摂食行動の日内リズム変動にNPGLが関与している可能性が示されたため、短日・長日での季節変動を示すハムスターを用い、NPGLの発現変動を解析した。共同研究先は、古くから共同研究を行っていたUC BerkeleyのKriegsfeld教授の研究室とした。まず、ゴールデンハムスターを用い、短日・長日条件下で飼育し、視床下部からmRNA抽出を行い、NPGLのmRNA発現解析を行ったが、顕著な発現変化は認められなかった。したがって、ゴールデンハムスターではNPGLは季節変動に伴う生理学的な変化に関与している可能性は低いと考えた。摂食行動の日内変動への関与を考えた際、食後のインスリン変化に応じてNPGLの発現変動が見られると予測した。そこでこれまで日本で研究を進めてきたラットを用い、NPGL細胞がインスリンに応答するかどうかを解析した。脳室内にインスリンを投与し、インスリン応答シグナルであるリン酸化Aktに着目して解析を行ったところ、NPGL細胞がインスリン応答を示すことを明らかにできた。さらに、絶食状態でNPGL発現が増加し、インスリン投与によりNPGL発現が低下することも明らかになり、血中インスリンレベルに応じてNPGLの産生が変化することを明らかにできた。これは生理的意義を考える上で、極めて重要な成果であると思われる。
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