研究課題/領域番号 |
15KK0262
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
関 由行 関西学院大学, 理工学部, 准教授 (20435655)
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研究期間 (年度) |
2015 – 2017
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キーワード | 生殖細胞 / 多能性幹細胞 / アホロートル |
研究実績の概要 |
本研究提案では、ヒト及びアホロートルの始原生殖細胞形成機構の共通原理を明らかにすることを目的としている。本年度の3月から研究を開始したため具体的な研究成果は未だ挙げられていない。現在、受入研究者のアンドリュー・ジョンソン博士の研究室で行われてきた研究(アホロートル生殖細胞研究)と研究代表者がこれまで解析してきた研究成果(ヒト、マウス)の情報交換を行い、今後の研究の方向性を議論し、研究に着手した段階である。マウス始原生殖細胞は、多能性細胞から生殖細胞が選別される期間が非常に短いが、ヒト及びアホロートルにおいては多能性細胞が長期間維持された後に始原生殖細胞が形成される。共同研究者のジョンソン博士のグループは、アホロートルにおいて中胚葉性多能性細胞を長期間維持するために、bFGFシグナル及びその下流で働く幾つかの転写制御因子が機能的に重要であることを示している。そこで本研究提案では、アホロートル始原生殖細胞形成で重要なbFGF及び転写制御因子がヒト始原生殖細胞形成においても機能的に必須かどうかの検証を行う予定である。受け入れ研究先はこれまで主にアホロートルを用いた生殖細胞研究を行っており、ヒトES細胞から始原生殖細胞への分化誘導系は確立されていなかった。そこで、現在ヒトES細胞から始原生殖細胞への分化誘導系及びCRISPR/Cas9システムを用いた候補遺伝子のノックアウト系の確立に着手したところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
アホロートルを用いてヒト始原生殖細胞形成に重要な遺伝子群のin vivoでの機能解析を行う予定にしていたが、受け入れ研究先のアホロートルのコロニーがウイルス感染で全滅してしまったため、予定より少し遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究提案では、生殖細胞決定様式の点でヒトと共通点が多いアホロートルを用いて以下の研究項目を遂行する予定である。 (1)アホロートル始原生殖細胞形成に関わる遺伝子群のヒト始原生殖細胞での機能解析:アホロートル始原生殖細胞は中胚葉性多能性細胞からBMP4シグナルによって誘導されるが、中胚葉性多能性細胞の多能性維持にbFGFシグナル及びその下流に存在する転写制御因子の機能が重要であることが示されている。そこで、ヒト始原生殖細胞形成においてもbFGF及び下流に存在する転写制御因子群が機能しているか否か検証するために、ヒトES細胞から始原生殖細胞への分化誘導系を用いて機能解析を行う。 (2)アホロートルPRDM14の発現及び機能解析:アホロートル初期胚のトランスクリプトーム解析によって、PRDM14がアニマルキャップ細胞の成立時期から原状陥入胚まで発現していることを見出している。そこで、アホロートル胚におけるPRDM14の時空間的発現分布を同定するために、in situ hybridizationを行う。また、PRDM14に対するモノフォリノを用いてPRDM14の機能解析を行う。 (3)ヒト始原生殖細胞形成に関わる分子のアホロートルでの発現・機能解析:in vitroの分化誘導系を用いた解析により、ヒト始原生殖細胞の形成過程においてSOX17の発現が誘導され、また機能的にも始原生殖細胞の形成に重要であることが示されている。しかしながら、ヒト胚におけるSOX17の機能を解析することは倫理的に極めて困難である。そこで、アホロートル始原生殖細胞形成にけるSOX17の機能解析を行う。
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