研究課題
(アホロートルとヒト生殖細胞形成機構の共通原理と種特異性の探索)共同研究者であるアンドリュー・ジョンソン博士のグループによって、ERKシグナル、転写因子ELK1及びMED23がアホロートルの始原生殖細胞形成に必須であることが示されていた。アホロートルでは、中胚葉遺伝子を発現した中胚葉性多能性細胞から始原生殖細胞が誘導されることが示されており、またヒトにおいても中胚葉性多能性細胞の存在が報告されている。また、我々はマウスを用いた解析によって、転写因子PRDM14が多能性誘導・維持活性を持つことを明らかにしてきた。そこで、ヒト中胚葉性多能性細胞におけるPRDM14、ERKシグナル及びELK1と中胚葉遺伝子の発現制御機構に関して、公開ChIP-seqデータを用いて解析を行った。その結果、ヒトES細胞においてPRDM14と非リン酸化型ELK1及び転写抑制マークであるH3K27me3が中胚葉遺伝子領域に存在することを突き止めた。また、中胚葉遺伝子と多能性遺伝子の両方を発現する4i(4種類の阻害剤)iPS細胞にPRDM14を誘導的に発現させることで、PRDM14が中胚葉遺伝子領域に結合すること、またその結果、ELK1のリクルート及びH3K27me3の増加に伴い中胚葉遺伝子の発現抑制が起こることを明らかにした。これらの結果は、ヒトにおいてPRDM14の発現とERKシグナルの活性が巧妙に制御されることで、中胚葉性多能性細胞の維持及び始原生殖細胞誘導が制御されている可能性を示唆している。
3: やや遅れている
アホロートルのコロニーがウイルス感染で全滅したことと、ヒト始原生殖細胞誘導に関する学内の倫理員会の設置に時間を要したため。
1. アホロートル始原生殖細胞形成機構の解明アホロートル胚におけるPrdm14の発現様式をin situ hybridizationにより解析する。また、始原生殖細胞におけるPrdm14の発現に関しては、始原生殖細胞のマーカーであるDazlとの二重染色を行う予定である。アホロートル胚及び始原生殖細胞形成におけるPrdm14の機能をアンチセンスモルフォリノを用いて解析する。また、マウス及びヒト始原生殖細胞形成に関する研究によって、初期胚におけるPrdm14の発現抑制のタイミングが始原生殖細胞形成の時期を決定している可能性を示唆する結果を得ている。そこで、アホロートル胚でPrdm14を過剰発現を行い、始原生殖細胞形成に与える影響を解析する。2. ヒト始原始原生殖細胞形成機構の解明これまでの解析によって、PRDM14は中胚葉遺伝子の発現抑制活性を持つことを明らかにしている。ヒト始原生殖細胞形成過程では、中胚葉遺伝子の一過的発現上昇及びPRDM14の一過的発現減少が起こる。そこで、我々はPRDM14と中胚葉遺伝子が互いの発現を抑制し合うことで、始原生殖細胞の形成を可能にしているではないかと考えている。そこで、本年度は始原生殖細胞形成過程おいてPRDM14の発現を継続的に発現させる、もしくは中胚葉遺伝子の発現をノックアウトすることでその可能性を検証する。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
Stem Cell Reports
巻: 7(6) ページ: 1072-1086
10.1016/j.stemcr.2016.10.007
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