研究課題
植物は様々な外部環境刺激に対して柔軟に形を変えるが、このような外部ストレスによる応答にもクロマチンの構造変化による遺伝子発現調節が関わっていることが近年明らかとなってきた。植物細胞の分化可塑性をより深く理解するためには、様々な刺激に対してエピゲノムがどのように変化し、ゲノム上のどの遺伝子領域が転写制御を受けやすくなるのか、または受けにくくなるのかをゲノムワイドに理解することが重要である。研究代表者はこれまでの研究から、植物の脱分化・再分化のマスター転写因子の遺伝子発現が種々のストレスによって上昇し、細胞のリプログラミングを誘発していることを明らかにしている。また、これらの因子は、通常の発生・分化の段階では、ヒストン修飾を介したクロマチン制御によって遺伝子発現抑制を受けていることを明らかにしている。これらの知見や国内外の関連研究の動向からも、1. 種々のストレスがヒストン修飾の変化を誘導し、クロマチン構造を変化させて脱分化関連転写因子の発現を促進する。また、2.ストレス誘導性の転写因子によってクロマチン構造が変化し、種々の脱分化関連因子の発現が促進する、という2つの仮説が立てられる。植物においてストレス誘導性の分化全能性・多能性発揮時にどのようなエピゲノム変化が起こるのか。本研究では、研究代表者がこれまで培ってきた実験系や材料を最大限利用し、ストレス誘導時や脱分化関連転写因子の誘導時におけるクロマチン構造の変化を経時的かつゲノムワイドに捉える。当該年度では国内外の共同研究により、傷害ストレスにおいて、どの種のヒストン修飾変化が起きるのか捉えることができた。傷害ストレスによってリプログラミングを引き起こす転写因子によってもこの修飾変化が引き起こされるか、またその際実際クロマチン構造変化がどのように起こるのか、現在さらなる研究を進めている。
3: やや遅れている
傷害ストレスによるヒストン修飾の経時変化をとらえることができたが、クロマチン構造変化をとらえるための実験がやや難航しているため。
傷害ストレスによってリプログラミングを引き起こす転写因子の発現によって、どのようなヒストン修飾変化がおきるのか捉える。また、クロマチンオープン状態を検出できる蛍光タンパク質等を用いて、ストレス処理後および注目する転写因子の発現後における変化を可視化することに取り組んでいく。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件)
Plant Physiology
巻: 175 ページ: 1158-1174
https://doi.org/10.1104/pp.17.01035
巻: 173 ページ: 1750-1762
10.1104/pp.16.01945