研究課題
2018年3月19日~2019年3月17日にかけて米国ウッズホール海洋研究所にて滞在研究を行った。滞在時の研究テーマとして、北極海の氷上定点において、1996年10月-1997年9月にかけて10-14日間隔で行われた、海表面から水深3500 mまでを最大8層に分けた30回の鉛直区分採集により採集されたホルマリン固定試料中に出現する、中層性カイアシ類の生活史解析を行った。肉食性種のParaeuchaeta glacialisは初期発育段階(C1)と雌雄成体(C6F/M)は主に500 m以深の深海に分布するが、中~後期の発育段階では水深100 m以浅に分布する、特徴的な発育に伴う鉛直移動を持つことが明らかになった。各発育段階の鉛直分布は、重量での脱皮間成長と関係があり、浅い層に分布する発育段階ほど脱皮間成長が大きく、深層に分布する発育段階の脱皮間成長は小さかった。同様の現象は親潮域の同属(P. elongata)にも知られており、産卵数の少ないParaeuchaeta属は抱卵成体や初期発育段階の時には捕食を避けるために深海に分布するが、遊泳力のついた中~後期発育段階では、より大きな成長を成し遂げるために、餌の豊富な表層に上昇移動した結果と解釈された。その他には中層性粒子食性種のScaphocalanus magnusの生活史を解析し、雌雄で発育速度が異なり、雌は成体(C6F)の状態で長い時間を過ごすのに対し、雄成体は口器付属肢が退化し、その寿命は短いことが明らかになった。中層性の粒子食性カイアシ類においてC6Fでの滞留時間を長くすることは、餌供給量が増加・好転した際に、速やかに再生産に移れる点で有利な生活史戦略であるといえる。これら2つの研究内容はいずれも帰国前に英文の論文原稿をまとめ、受け入れ研究者のAshjian博士による校閲を受けた。他に関連する論文7報を発表した。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件)
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