研究課題
今年度は、昨年度に引き続き、葉緑体オートファジーに関わるレセプターの同定に向けて、共免疫沈降法とLC-MS/MSによるATG8との相互作用因子の解析を中心に行った。これまでの研究で、オートファゴソームやプラスチドを内容成分とするオートファゴソームであるRCBが細胞質に蓄積する新奇変異体を純遺伝学的に単離した。マップベースクローニングならびに相補試験により、この新規変異体の原因遺伝子はGREEN FLUORESCENT SEED 9/TRANSPARENT TESTA 9 (GFS9/TT9)であることが判明した。このgfs9/tt9変異体に、オートファジーに必須の因子であるATG5の欠損変異(atg5)を導入すると、オートファゴソームやRCBの蓄積が見られなくなることを確認した。また、RCBやオートファゴソームの蓄積は暗所の栄養飢餓条件下で促進されていた。昨年度までに作成したvenus (YFP variant)-ATG8を導入した本変異体から、オルガネラを密度勾配超遠心により分画し、RCBに富む画分を得た。得られた画分を低張液にさらすことでRCBを破砕した。また界面活性剤により膜タンパク質を可溶化させた。これらの破砕画分や膜タンパク質可溶化画分からATG8と相互作用する因子を共免疫沈降により回収した。回収されたタンパク質をSDS-PAGEにより分離後、タンパク質をゲル内でトリプシン消化し、生じたペプチドをLC-MS/MS解析に供した。同定されたタンパク質の中で、ATG8-interacting motif (AIM)やintrinsically disordered protein region (IDPR)を持つものをピックアップし、レセプター候補因子の絞り込みを行った。
2: おおむね順調に進展している
昨年度までは、seedlingsから調製した総タンパク質画分を共免疫沈降実験の出発材料に用いていたが、今年度はRCBに富む画分を出発材料に用いた。この結果、MS解析では葉緑体のオートファジーレセプター候補として有望な、葉緑体包膜に局在性を持つタンパク質がいくつか同定することができた。
絞り込んだ候補因子が、実際に葉緑体のオートファジーレセプターとして機能することを多角的に検証していく必要がある。具体的には、候補因子をコードする遺伝子のノックアウト変異体を同定し、それら変異体における葉緑体のオートファジーについての解析を進める。また、候補因子について、酵母ツーハイブリッド法によりATG8との相互作用について検証していく。
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Plant Signaling & Behavior
巻: 14 ページ: 1552057~1552057
doi.org/10.1080/15592324.2018.1552057