葉緑体は植物に特有なオルガネラであり、光合成のために窒素の多くが分配されている。植物にとって、成長や生殖に伴う栄養リサイクルやオルガネラ品質管理としての葉緑体の分解は、生存・成長戦略の一つとして重要な意味を持つ。オートファジーは栄養飢餓などのストレス条件下で働く真核生物に普遍の細胞内分解システムである。葉緑体は「選択的オートファジー」により特異小胞RCBを介して部分的に液胞に運ばれ分解されるが、その詳細な分子機構は不明である。本研究では葉緑体オートファジーの選択性に関わる分子実態とその生理意義について、国際的に活躍している研究者たちと共同研究を行うことにより明らかにすることを目的に、最終年度は以下の点について進めた。 (1)葉緑体オートファジーに関わるレセプターの同定に向けて、共免疫沈降法とLC-MS/MSによるATG8との相互作用因子の解析を進めた。昨年度不調であったLC-MSのFT検出器を交換し、高感度下でのデータのとり直しを行った。その結果、葉緑体包膜に局在するタンパク質がいくつか同定され、これらをレセプター候補とした。 (2)MS解析で絞り込んだ葉緑体オートファジーのレセプター候補遺伝子の欠損変異体を複数単離するとともに、オルガネラ可視化のための蛍光マーカーの導入を行った。 (3)先に単離したRCBを異常蓄積するgfs9-5変異体では、オートファジーマーカーであるATG8がホスファチジルエタノールアミンと共有結合した膜結合型(ATG8-PE)として野生型の数倍高い濃度で蓄積していることを明らかにした。
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