研究課題
トウヒ属は北半球の温帯以北の地域において広く優占する林業上重要な針葉樹であり、倒木上に実生が更新するという特徴をもつ。そのため、実生の定着には倒木の分解様式が大きな影響を及ぼす。菌類による倒木の分解様式は、倒木の構造成分であるリグニンとホロセルロースに対する分解比率の違いを類型化した「腐朽型」に区分され、褐色腐朽と白色腐朽が主に知られている。このうち褐色腐朽はpH が低下することなどによりトウヒ属実生の定着を阻害することが知られている。申請者がこれまでに行った調査では、緯度による気候条件の違いが倒木の菌類群集に影響し、これにより低緯度ほど褐色腐朽の頻度が高く、そのことが倒木上の樹木実生群集に影響することが分かっている。しかし、本邦よりも高緯度の地域における倒木の腐朽型の分布パターンや樹木実生との関係はまったく分かっていない。そこで本研究では、本邦よりも高緯度に位置する欧州の森林において、トウヒと同属のドイツトウヒの倒木を対象として、腐朽型の分布パターンと樹木実生の関係を緯度に沿って明らかにする。さらに、倒木の腐朽型を決定している菌類群集の発達メカニズムの解明を目指し、菌類生理学的な室内実験を行う。最終年度である2019年度には、イギリス滞在中に得たデータの解析・論文化を進めた。土壌培地上の菌糸ネットワークの動態を記録した写真画像から画像解析により菌糸面積を算出した結果、資源の量によって菌糸体が行動を「決断」・「記憶」しているデータを得、論文としてまとめた。木片に接種した菌糸同士の競争関係に対する資源量の影響を調べた実験では、資源の量によって白色腐朽菌と褐色腐朽菌の菌種間競争関係が変化することと、菌種間競争が木材分解に影響することを示す結果を得、論文としてまとめた。
すべて 2020 2019 2017
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 5件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件)
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