本研究計画では、1)ニパウイルスの病原性発現機序に関与すると考えられているアクセサリータンパクと相互作用する宿主因子の探索、2)ブタにおけるアクセサリータンパクの免疫応答に対する機能の探索、3)ブタでのニパウイルス感染症に対するワクチンの開発、を目的とした。1)については、Vタンパクについてそれぞれと相互作用する宿主因子を同定することができた。またCタンパクについては、細胞内での挙動を明らかにし、その核内移行シグナル領域を同定した。ブタにおけるアクセサリータンパクの解析は、カナダにおいて行い、Vタンパクがブタの免疫細胞において、IFN alphaおよびbetaの発現誘導を阻害することを明らかにした。ブタ用のワクチン開発研究では、Pseudorabies virus(PRV)ベクターにニパウイルスのG遺伝子を組み込んだ2価ワクチンを作出した。PRVが持つブタへの病原性を減弱するために、thymidine kinase遺伝子やUS7、8遺伝子を欠損させた。また、免疫応答の解析のためにニパウイルスGタンパクを抗原としたELISA系の開発も行った。このELISAを用いて、ワクチン後の血中抗G抗体価を測定したところ、2、3週目から抗体上昇が認められ、5週目には高い力価観察した。まず、我々のワクチンをブタに接種しても接種後5週目までに病原性は全く示さなかった。また攻撃試験後の鼻スワブ中ウイルス量を測定したところ、ワクチン群では非常に早期にウイルスの排出が消失していることが明らかとなった。また臓器中のウイルス量を比較しても、ワクチン軍ではリンパ節、肺で明らかにウイルス量の減少が認められた。このことから、本組換え2価ワクチンはブタのニパウイルス感染症に対し有効であると考えられた。
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