本国際共同研究は、イネ以外の植物を材料に初期胚における細胞分化機構を解析し、その種を越えた普遍性を検証する事を研究目的とする。本国際共同研究により、植物の発生機構の進化を考える上で、鍵となる重要な知見をもたらすことが期待できる。本国際共同研究の目的を達成するためには、イネと同じイネ科に属しており、分子遺伝学的な実験材料としてよく整備されているトウモロコシを研究材料に用いることが最適である。そこで、本研究では、トウモロコシの変異系統集団から、イネの胚発生変異体と類似した系統を選抜し、その解析を通して、イネ科植物の初期胚の細胞分化機構の普遍性と特異性を明らかにすることを目的とした。本国際共同研究では、トウモロコシの変異系統の蓄積がある米国の研究者(フロリダ大学McCarty教授)との共同研究を行った。研究代表者の米国滞在中、ならびに国内での研究において、変異体のスクリーニング並びに、トランスポゾンタギング法による原因遺伝子の単離を行った。 具体的には、すでにイネで単離されていた胚発生関連突然変異の原因遺伝子のトウモロコシオルソログのノックアウトならびにノックダウン系統を取得し、表現型の解析を行ったところ、ノックダウン系統はイネと同様の胚形成異常が観察された。一方、イネにはなかった弱アレルの解析から、母体の遺伝子型が次世代である胚の表現型に影響を及ぼすことを明らかにした(論文投稿準備中)。 一方、フォワードジェテティクスで、トウモロコシでの胚形成突然変異をスクリーニングし原因遺伝子を単離するアプローチについては、多数の原因遺伝子を明らかにしたものの、イネで明らかにされている胚形成遺伝子群とは全く異なる新規因子が多数単離されている。これらについても発表準備を進めている。
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