研究課題/領域番号 |
15KK0280
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
石川 亮 神戸大学, 農学研究科, 助教 (70467687)
|
研究期間 (年度) |
2016 – 2018
|
キーワード | イネ / 栽培化 / 脱粒性 |
研究実績の概要 |
多くの作物において、種子脱粒性の喪失は栽培化初期に選抜対象となった重要な形質である。イネにおいても、脱粒性をもたらす種子基部の離層形成に異常の生じた変異体が栽培化されるようになったと考えられ、脱粒性を支配する2つの主要遺伝子座が知られている。ひとつは、インディカ-ジャポニカ間の自然変異として同定されたqSH1 遺伝子座であり、もうひとつはインディカ-野生イネ間で同定されたsh4 遺伝子座である。sh4 遺伝子座における変異は、全ての栽培イネにおいて保存されていることから脱粒性の喪失に重要な役割を果たしたと考えられている。しかしながら、現在これら主要2遺伝子座以外で脱粒性の喪失に関与したと考えられる遺伝子は、申請者が解析を進めるqSH3座以外に報告はされていない。本研究では、イネの栽培化におけるqSH3座の変異の役割を明らかにすることに加えて、非脱粒性に関与した他の遺伝子座における変異を探索することとし、インディカ型栽培イネ(カサラス)を用いた脱粒性遺伝子座の探索を進めた。基課題において作出した交雑分離集団を温室ポットにて栽培し、短日処理を施し出穂期を揃え出穂後の穂を回収した。各系統の種子の脱粒に要する強度を測定し形質値とし、分離集団内で形質値に基づいて強度の高いグループと低いグループを抜粋した。それらのDNAを抽出し、各グループにおいてそれぞれ混合し次世代シーケンサーを用いて、関与遺伝子座を同定したところ複数の遺伝子座の関与を示唆する結果が得られた。今後はこれら同定された遺伝子座の効果を検証する必要がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
インディカ型栽培イネ(カサラス)を用いた新規脱粒性遺伝子座の探索では、交雑分離集団において明瞭な脱粒性の分離が見られたため、次世代シーケンサーを用いたQTL-seq解析(Takagi et al. 2013 Plant Journal)を実施した頃、予想外に複数の遺伝子座の存在が示唆された。このためそれらの遺伝子座効果を評価する遺伝学的材料の作出に着手した。これら複数の新規遺伝子座と既知遺伝子座との相互作用の解明には研究材料の育成に時間を要することから、研究計画と海外渡航時期を見直した。
|
今後の研究の推進方策 |
インディカ型栽培イネ(カサラス)を用いた新規脱粒性遺伝子座の探索について引き続き実験材料の作出を進めるとともに、既知遺伝子座との相互作用を評価する研究材料の育成に着手する。また共同研究先とは、イネの栽培化におけるqSH3の役割について明らかにするため平成29年度と平成30年度に分割して渡航し、研究を進めることに計画を変更した。
|