塩ストレス下において、植物の生育は体内にナトリウムを過剰量蓄積することで阻害される。ゆえに植物の耐塩性機構を理解し、向上させるためには、植物体が持つナトリウム輸送系を解明することが重要である。特に植物の根において、どのような機構でナトリウムが流入するのか、また一度、根に蓄積されたナトリウムが根外へ排出されることはありうるのか、は不明である。そこで本研究はイネの根におけるナトリウム流入・排出機構を明らかにすることを目的とする。初年度は、根におけるナトリウム蓄積量が異なるイネ品種の選抜および根からのナトリウム排出能の差に基づいた品種選抜実験系の構築を行った。塩ストレス処理24時間後の根のナトリウム濃度を指標として、イネ100品種から選抜を行った。その結果、塩ストレス処理前と処理後のナトリウム濃度を比較すると、1.2~5.9倍と品種間に大きな差が見られた。塩ストレス下における根のナトリウム濃度は4.8~11.3mg/gDWであった。引き続き2次選抜を行い、再現性の確認を行う予定である。根からのナトリウム排出能の検定について、耐塩性品種や塩感受性品種を用いて根分け法による水耕栽培実験系を構築した。その結果、塩ストレス処理後、一度根に取り込まれたナトリウムは活発に根外へと排出されることが明らかとなった。また必ずしも耐塩性に優れない品種も根からの高いナトリウム排出能を有していることが明らかとなった。根分け法は実験系のセットアップが煩雑であり、多数の品種選抜には不向きであるため、引き続き、多数の品種選抜にふさわしい実験系の構築にも取り組む。
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