研究実績の概要 |
効率的に魚類養殖を推進するには,魚類の摂食・栄養素利用の調節機構に着目した技術開発が有効と考えられる。レプチンはほ乳類において摂食や代謝に重要な役割を果たすことが知られている。効率的な魚類養殖を進める上で,レプチンは魚類においても有望な標的になると考えられるが,その基礎情報は依然として不足している。本課題では,水産養殖分野にて先進的な研究を行うノルウェーとの研究協力体制を強化することも目的の一つとし,また効率的な養殖技術開発へ向けた基盤研究として,ベルゲン大学にてレプチン受容体欠損魚(ゼブラフィッシュ)を作出しその表現型を解析した。 昨年度までにノルウェー・ベルゲン大学での長期在外研究によってレプチン受容体欠損ゼブラフィッシュを作出し,その変異検出系を確立している。今年度は作出したレプチン受容体欠損魚の栄養応答を明らかにするため,再度ベルゲン大学に短期滞在し,遺伝子欠損魚稚魚への栄養素(タンパク質:ラクトアルブミン加水分解物)投与実験を実施した(チューブ・フィーディング法)。その結果,レプチン受容体欠損ゼブラフィッシュにおける腸管でのペプチド輸送体(pept1aおよびb)や栄養素受容体(casr,t1r1, t1r2-2およびt1r3)の遺伝子発現はタンパク質の投与によって野生型と比較して増大した。これまでにゼブラフィッシュではレプチン受容体の欠損体の成長に関する表現型について異なる結果が報告されているものの(高成長表現型の有無),栄養素(タンパク質)の認知・吸収が効率的に行われていることが示唆された。 また上記成果に加えて,本国際共同研究をきっかけとして,ノルウェーでの共同研究プロジェクトの獲得やさらなる人的交流も推進しており,継続的な研究協力体制も構築された。
|