研究課題
皮膚基底膜タンパクを構成する分子の一つである17型コラーゲンは、表皮真皮間接合の維持に極めて重要な働きを担っている。遺伝子変異に伴い17型コラーゲンの発現が消失すると、外的刺激に伴い容易に水疱を形成する表皮水疱症の一亜型を発症する。一方、17型コラーゲンのC末端に1アミノ酸置換変異(R1303Q)を生じた場合、水疱形成だけでなく基底膜の重層化を来す。本研究の目的は、R1303Q変異を持つ遺伝子改変マモデルマウスを作製し、基底膜の構築機構の解明を目指すことである。平成28年度は、R1282Q変異(ヒト17型コラーゲンではR1303Q変異に相当)を17型コラーゲンに持つ、遺伝子改変(ノックイン)マウスを作製した。当初、変異を有する17型コラーゲン遺伝子発現トランスジェニックマウスを作製し、研究者らが以前に作製した17型コラーゲン遺伝子ノックアウトマウスと交配することを予定してたが、経済的にもメリットが大きく、手技が簡単な、CRISPR/Cas9システムを用いた。マウスCOL17のR1282付近を特異的に認識可能なガイドRNAを2種設計し、マウスCOL17 DNAの一部をクローニングしたベクターとCas9発現ベクターをin vitroでコトランスフェクションし、効率よく標的部位で切断可能であることを確認した。その後、R1282Q変異を導入した一本鎖DNAとともにCas9タンパクおよびガイドRNAを発現するベクターをマウス受精卵へマイクロインジェクション施行した。その結果、R1282Q変異をヘテロで有するF0とF1マウスが得られた。今後、ヘテロマウス同志を交配し、R1282Q変異を17型コラーゲンにホモで有する疾患マウスを作製し解析予定である。
1: 当初の計画以上に進展している
R1282Q変異(ヒト17型コラーゲンではR1303Q変異に相当)を17型コラーゲンに持つ、遺伝子改変(ノックイン)マウスの作製に成功したため。
研究者は平成29年4月6日からフライブルグ大学皮膚科の客員研究員となり、国際共同研究を開始する予定である。フライブルグ大学皮膚科では、17型コラーゲンにR1303Q変異を有する表皮水疱症患者を複数治療しており、臨床所見とマウスモデルとの相関解析に適している。遺伝子改変動物作成技術も豊富であり、本モデルマウスの解析も共同で進めていく予定である。
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Hum Mol Genet
巻: 25 ページ: 328-339
10.1093/hmg/ddv478.