骨は,生涯を通じてメカノバイオロジカルなリモデリングにより,その形態の適応を図っている.股関節症や膝関節症,あるいは歯の欠損等は生体力学的な調和を崩し,またこれらへの医科・歯科の補綴治療等もまた力の負荷様相を大きく変える.そして歯科インプラント・有床義歯による過剰な負荷に起因する骨吸収,あるいは人工関節ステム周囲骨のストレスシールディングによる骨吸収等が惹起される.そこで治療遂行には,経時的なメカノバイオロジカルな骨リモデリングを考慮し,生体力学的要因を制御した指針が求められる.その実現にはメカニカルストレスの伝達・発現様相,惹起されるメカノバイオロジカルな反応を把握し,さらにその臨床的アウトカムを評価することが必須であるが,その一連の理解は未だ不十分である.これまで,NaF-Positron emission tomography(NaF-PET)により検索した義歯装着直後の骨代謝変化,およびFinite Element Analysis(FEA)により計算した床下顎堤のmechanical stimuliの変化との関連を検索したところ,義歯装着後の義歯床下顎骨において,FEAにより解析した応力値の顎骨内分布と,NaF-PETから計測した骨代謝指標値であるSUVの分布とが相関関係にあることを見出した.その後,臨床的アウトカムである義歯装着5年後のCT follow upデータとNaF-PETにより観察された義歯装着直後の骨代謝動態との関連について検討した.その結果,義歯装着直後に骨代謝が変化しなかった群では,5年後のCTデータに変化は認められなかったが,義歯装着直後に骨代謝が変化した群では,5年後のCTにも変化が認められるケースが認められた.これらの結果から,NaF-PETによる骨代謝変化の観察により長期予後の予測に貢献できる可能性があることが示唆された.
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