研究実績の概要 |
本研究におけるMRS-GABA解析には、Near, Ph.D. (カナダ・マギル大)の支援を得た。また、PLE解析には、Northoff, M.D., Ph.D.(カナダ・オタワ大)の技術援助を得た。先ず、MRS-GABAについて述べる。健常高齢者において、後部帯状回および前部帯状回におけるGlx濃度はMean diffusivityと有意な負の関連性が見られた。このことは、グルタミン+グルタメートの過剰が、軸索走行異常に関連している可能性を示唆するものと考えられる。さらに、右下前頭回におけるGABA-aレセプター濃度は、注意機能と有意に正相関していることが明らかになった。同時に、ASLを用いた脳血流検査、およびVBMを用いた大脳灰白質検査においては、注意機能検査との間に、有意な関連性を認めなかった。右下前頭回は、後部帯状回と注意機能ネットワークを形成しているとの仮説が示されている。GABA-Aレセプター・イメージングは、脳形態学的変化や脳血流の異常に先行するとの報告もあり、今回の結果は、これを指示するものと考えられた。resting functional MRI(fMRI)を用いた解析について述べる。Resting fMRIは、被験者が安静時注視点を眺めている状態でBOLD信号測定を行うことで、安静時における脳機能ネットワークの計測を行う手法である。領域ごとの時間波形を2つずつ組にして波形の相関を求める。時間波形が正の相関を示している脳領域どうしは、互いに機能的連絡を保っていると考えられる。本研究で得られる解析技術は、他の精神疾患の脳画像におけるマルチモダリティ・データの解析にも応用できることから、汎用性の高い国際共同研究と言えると考えている。
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