研究課題/領域番号 |
15KK0300
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
堀 一浩 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (70379080)
|
研究期間 (年度) |
2016 – 2018
|
キーワード | 嚥下 / 咽頭残留 / 嚥下障害 / 舌圧 |
研究実績の概要 |
超高齢社会となった日本において,加齢や脳血管疾患などの後遺症に伴う嚥下障害は,医療のみならず介護や医療費負担増加などの大きな問題となっていることから,その病態像を明らかにし,適切な医療の介入を進めることが強く求められている. 咀嚼・嚥下は,口腔内に取り込んだ食物を粉砕し,これを唾液と混合させて食塊を形成し,嚥下反射によって咽頭から食道,胃へと運び込む一連の消化管活動である.この間,顎口腔顔面から上部消化管にいたるまでの協調的な運動が必要とされる.臨床の現場では,嚥下機能評価として嚥下造影検査や嚥下内視鏡検査が行われることが多いが,いずれも定性的な評価にとどまっている.昨今のセンシング技術の向上により定量化評価法を構築する試みが行われているものの,未だ確立した物は見当たらない. 我々はこれまで,圧力センサを埋入した実験用口蓋床や舌圧測定用センサシートを用いて,健常者や嚥下障害患者を対象とした咀嚼時や嚥下時の舌と口蓋との接触圧を測定してきた.さらに,現在咽頭残留の定量評価のための新たな試みを行っている. 一方,渡航先Prof. McCullochは舌の筋活動や咽頭残留について,多面的で定量的な評価法を開発し報告している.また,統計学的手法を用いてこれらの測定結果を評価する試みを行っている. 本検討課題では,舌機能と摂食・嚥下時の食塊移送に焦点をあて,(1)咽頭残留量を定量的に測定する新たな方法,(2)舌圧や咽頭残留評価結果から嚥下障害の程度を具体的に判別するモデルを構築することを目的とする. これまでに渡航先研究機関との連絡をとり渡航準備を整えてきた.2017年5月6日より渡航し,研究を実施する予定である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに渡航先研究機関との連絡をとり渡航準備を整えてきた.2017年5月6日より渡航し,研究を実施する予定である.
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに渡航先研究機関との連絡をとり渡航準備を整えてきた.2017年5月6日より渡航し,以下の研究を実施する予定である. まず我々が行っている香料を用いた咽頭残留の定量的評価法と,Wisconsin大学で行っているインピーダンスを用いた咽頭残留評価法を比較検討し,その評価法の確立を図る.さらに,舌圧や咽頭残留評価結果から嚥下障害の程度を具体的に判別するモデルを構築する. 具体的には,健常被験者において口腔・咽頭残留をシミュレートし,香料を用いた口腔・咽頭残留の定量的評価法の確立を図る. 被験者として健常被験者を用いる.咽頭残留量の測定には,香料の強度としてニオイセンサXP-329IIIRを,インピーダンス測定としてハイレゾリューションマノメトリーを用いる.被験者の咽頭内に香料もしくは蒸留水を前歯切端から12cmの位置に留置した直径1mmのチューブを介して注入し,嚥下せず,咽頭内に保持するように指示する.注入前と注入直後(0秒),注入後より時系列的にニオイ値とインピーダンス値を測定する.さらに嚥下後にも時系列にそってニオイ値とインピーダンス値を測定する.結果から,咽頭内保持量とニオイ値およびインピーダンス値との関係を分析する.呼吸運動をあわせて分析し,呼吸によるによる影響を補正する.これらの結果より,より精度の高い咽頭残留評価法の確立を図る. さらに,舌圧や咽頭残留評価結果などを説明変数,誤嚥や喉頭侵入を説明変数とした多変量解析を行い,舌圧や咽頭残留が誤嚥に及ぼすリスクを評価するモデルを構築する.
|