研究課題/領域番号 |
15KK0302
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
林 研至 金沢大学, 附属病院, 助教 (00422642)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2018
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キーワード | 遺伝性不整脈 / 全エクソーム解析 / 細胞電気生理 / ゼブラフィッシュ |
研究実績の概要 |
本研究は、(1)従来の遺伝子解析法で変異が同定されなかった遺伝性不整脈家系に対し、全エクソーム解析を行うこと、(2)従来の機能解析に加え、ゼブラフィッシュ胚が遺伝性不整脈の重症度評価法に有用かどうか明らかにすることを目的とした。 (1) については、遺伝性不整脈34症例に対して次世代シークエンサーによる全エクソーム解析あるいは拡大候補遺伝子解析を行なった。先天性QT延長症候群16症例のうち9例に遺伝子変異を見出し、Type 1 Brugada症候群4症例のうち、1例に遺伝子変異を見出し、若年発症徐脈3症例のうち、2例に遺伝子変異を見出し、不整脈原性右室心筋症3例のうち、1人に遺伝子変異を見出し、特発性心室細動2症例および家族性心房細動6症例に対して遺伝子解析を行っている。(2) 昨年度若年発症徐脈症例より見出されたLMNA遺伝子変異について、ゼブラフィッシュによる機能解析を試みた。Crispr/Cas9システムを用いてヒトLMNA遺伝子のホモログであるゼブラフィッシュlmna遺伝子に変異を導入し、心拍数、心機能、光学マッピングによる刺激伝導速度の評価を行なった。これらの成果を日本循環器学会総会および米国心臓協会学術集会で報告した。lmna遺伝子変異をもつF0世代のゼブラフィッシュが成魚になった時点で野生型ゼブラフィッシュと異種交配させ、その胚の遺伝子解析を行ったところ、ヘテロ接合性の挿入欠失変異を見出した。このF1世代のゼブラフィッシュを飼育し、成魚となった時点で尾びれよりDNAを抽出し遺伝子解析を行ったところ、ヘテロ接合性の挿入欠失変異を見出した。このヘテロ接合性変異体アレルを有する成魚どうしを交配させ、遺伝子解析を行ったところ、ヘテロ接合性とホモ接合性の変異をそれぞれ見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目標のうち、(1) 従来の遺伝子解析法で変異が同定されなかった遺伝性不整脈家系に対し、全エクソーム解析あるいは拡大候補遺伝子解析を行うことについては、新たに集積した34症例に対して解析することができた。一定の研究成果が得られ、おおむね順調に経過していると考えられる。もう一方の研究目標である、(2) 従来の機能解析に加え、ゼブラフィッシュ胚が遺伝性不整脈の重症度評価法に有用かどうか明らかにすることについては、米国ボストンで作成したノックアウトゼブラフィッシュを飼育し、ヘテロ接合性およびホモ接合性変異体アレルを有するF2世代のゼブラフィッシュを作成することができた。一定の研究成果が得られ、おおむね順調に経過していると考えられる。また、H28年度研究成果を国際学会で報告することができた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き遺伝性不整脈家系を集積し、次世代シークエンサーを用いて遺伝子解析を行い、遺伝子多型の病原性を決定する。見出された遺伝子変異について動物培養細胞およびゼブラフィッシュを用いて詳細に機能評価を行なう。新規疾患原因遺伝子の発見、不整脈の新しい発症メカニズムの解明を目指す。今後の研究として、Crispr/Cas9システムを用いてゼブラフィッシュ遺伝性不整脈疾患モデルを作成し、疾患の重症度評価、適切な治療法の確立、新規治療薬の開発を目指す。なお、ゼブラフィッシュのゲノム編集および機能評価についてブリガムアンドウイメンズ病院循環器内科のDr. Calum Macraeおよび現在同科に研究留学中の寺本医師と共同で行なっていく予定である。
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