研究課題
肥満によるインスリン抵抗性発症メカニズムを明らかにすることは、2型糖尿病およびその合併症の予防と治療において最大の研究テーマであり、世界的な課題となっている。本研究の目的は、耐糖能異常の治療標的遺伝子の臨床応用への第一段階として、その作用メカニズム、特にインスリン抵抗性の関係について明らかにすることである。これまで私たちは、耐糖能異常にフォーカスした研究がゼブラフィッシュを用いて行い、新規バイオマーカー・治療標的遺伝子候補を発見してきた。本年度では、米国ヴァンダービルト大学医学部のWenbiao Chen教授と国際共同研究を通して、これまで発見してきた新規治療標的遺伝子のバリデーションスタディを行った。Chen教授の研究チームは、骨格筋特異的なIGF-I 受容体機能阻害によるインスリン抵抗ゼブラフィッシュ系統(zMIR)を所有している。このzMIR系統に対し、私たちが開発した耐糖能異常ゼブラフィッシュ作製技術を適用したところ、肥満症状を伴う高血糖状態(正常の約4倍)のモデル構築に成功した。この高血糖zMIRの肝膵臓と骨格筋組織を回収し、リアルタイムPCRによりこれまでの研究(H25-26年度科研費若手B)で得られた「耐糖能異常関連候補遺伝子」群の遺伝子発現量を解析した。さらに、発現増加が確認できた4つの遺伝子に対してCRISPR/Cas9システムを用いてノックアウト系統を構築し、肥満誘導試験を実施した。その結果、2つのノックアウト系統では、肥満誘導時でも高血糖状態が発症しなかった(あるいは軽減された)。以上、一連の研究により、私たちは耐糖能異常に対する2つの新規治療標的遺伝子を発見した。
すべて 2018 2017
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 4件)
Scientific Reports
巻: 7 ページ: -
10.1038/s41598-017-01432-w