研究課題
化膿レンサ球菌はヒトを唯一の宿主とし,主に上気道と皮膚に局所性化膿性疾患を惹き起こす.また,これらの疾患が治癒した後に急性リウマチ熱や急性糸球体腎炎を続発症として発症させる場合がある.さらには,低頻度ではあるものの,壊死性筋膜炎,敗血症,多臓器不全等をともなう劇症型レンサ球菌感染症を起こすことがあるため,臨床的に注意が必要な細菌種である.上市されているワクチンは存在せず,治療法と予防法の開発が社会的に望まれている.化膿レンサ球菌は血清型依存的に多様な線毛を産生するため,線毛タンパク質の抗原性は本菌の型別に利用されてきた.線毛は菌体の宿主組織への付着やバイオフィルム形成に重要であることから,線毛の発現機構や詳細な機能の解析を行うことにより,化膿レンサ球菌の定着を感染初期段階に抑制するという感染防御法の開発に繋がると考えた.昨年度から継続して,線毛の発現機構の解析を国際共同研究者とともに行った結果,血清型依存性に培養温度による線毛産生量の違いが認められる菌株には特定の転写因子が存在し,温度センサーである可能性が示唆された.疫学データを補強するため,国際共同研究者の研究室に保存されている世界各国からの臨床分離株について,培養温度が線毛産生効率に与える影響の検討を継続するとともに,温度感受性の線毛産生を呈する特定の血清型菌株について,線毛関連遺伝子に対する転写因子の関与を明らかにし,環境温度感知機構の解析を行った.また,国際共同研究者の協力のもと,培養温度の変化に対する代謝パターンの変化についての検討を開始した.
2: おおむね順調に進展している
化膿レンサ球菌の温度感受性線毛発現を担う温度感知機構を明らかにするとともに,さらに多様な臨床分離株を用いて解析を行った.また,代謝関連の解析も開始しているため,本申請研究は概ね順調に進展していると考えられる.
今後,臨床分離株を用いた解析を継続するとともに,温度感知機構の普遍性についてさらに詳細に検討する予定である.また,培養温度の違いが代謝過程に影響を与えることにより線毛発現が変化するかについて解析を行う.他のレンサ球種種についても環境温度感知機構が感染過程において意義があるかについて,感染実験を行い検討する予定である.
すべて 2018 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
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