研究課題/領域番号 |
15KK0307
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
梶本 武利 神戸大学, 医学研究科, 助教 (00509953)
|
研究期間 (年度) |
2016 – 2019
|
キーワード | シグナル伝達 / プロテインキナーゼC / スフィンゴシン1-リン酸 |
研究実績の概要 |
本国際共同研究課題では、基課題の最終目標である「スフィンゴシン1-リン酸(S1P)シグナリングによるエクソソームへの積荷ソーティング機構を標的とする癌転移抑制剤の開発」を加速するために、エクソソームへの積荷ソーティングにおけるS1PによるプロテインキナーゼCζ(PKCζ)活性化のメカニズムを明らかにすることを目的としている。 平成30年度は、「課題2」の「分子構造的アプローチによるS1P-PKCζ相互作用の詳細解明」および「課題3」の「癌の増悪および遠隔転移におけるS1P-PKCζシグナリングの役割の解明」について研究を行った。「分子構造的アプローチによるS1P-PKCζ相互作用の詳細解明」については、昨年度に明らかにしたS1PとPKCζのアミノ酸レベルでの相互作用について、PKCζの活性化調節との関係を検討し、S1Pの結合に必須のアミノ酸がS1PによるPKCζの直接の活性化調節に重要であることを明らかにした。また、「癌の増悪および遠隔転移におけるS1P-PKCζシグナリングの役割の解明」については、癌細胞株を用いてS1P-PKCζ相互作用の癌増悪との関係を検討したところ、今回新たに見出したS1P-PKCζシグナリングが癌細胞のアポトーシスにブレーキをかける役割を果たし、貧栄養環境下においても癌細胞がアポトーシスを起こしにくい状態を作ることが示された。またさらにS1Pの結合に必須のアミノ酸の変異によりS1PとPKCζの相互作用を阻害することにより、癌細胞をアポトーシスへ誘導することに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は、「課題2」および「課題3」の研究を行い、結果S1PによるPKCζの直接の活性化機構の分子メカニズムを明らかにし、またS1P-PKCζシグナリングの癌細胞のアポトーシス抵抗性における役割を見出した。現在までのところ当初の計画通り順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
令和元年度は、「課題2」の「分子構造的アプローチによるS1P-PKCζ相互作用の詳細解明」について、in silico分子シミュレーション解析によりS1PによるPKCζ活性化のさらに詳細な分子メカニズムを明らかにする。また「課題3」の「癌の増悪および遠隔転移におけるS1P-PKCζシグナリングの役割の解明」について、野生型PKCζ発現癌細胞とPKCζ変異体発現癌細胞を作製し、癌転移実験において両者を比較することで、癌の増悪および遠隔転移におけるS1P-PKCζシグナリングの役割を明らかにする。
|