研究課題
本研究では、リソソーム蓄積がTFEBの発現上昇及び活性化を引き起こすことで、オートファジーの亢進とオートリソソーム形成異常に繋がり、その結果として神経細胞死を起こしていると考え、リソソーム病における病態発現メカニズムを証明することを目的とした。平成28年度は、共同研究先であるTIGEMで作製した脳特異的TFEB KO-Sandhoff病モデルマウスを用いて病態解析を行った。脳切片を用いた免疫組織化学及びWestern blottingの結果から、脳特異的TFEB KO-Sandhoff病モデルマウス(ダブルKOマウス:DKO)ではSandhoff病と比較してCleaved Caspase-3が増大しており、神経細胞死が亢進していることが明らかとなった。また、炎症性サイトカインのELISA及びグリアマーカーの染色の結果から、DKOではグリアの活性化も亢進していることが示された。さらにオートファゴソームマーカーであるLC3の増大及びリソソームマーカーであるLAMP1の減少が観察された。これらの結果は、リソソーム制御因子であるTFEBのKOにより、リソソームの新生(刺激により新たに合成されるリソソーム)が起こらなくなり、オートファゴソームとリソソームのバランスが悪くなった結果としてオートファゴソームの蓄積が起こり、オートファジーに異常が起こっていることが考えられる。以上の結果より、リソソーム病においてTFEBはリソソームを新たに合成し、オートファジー異常を回避することで神経保護的に働いていることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度は、脳特異的TFEB KOマウスとリソソーム病モデルマウスの交配によりダブルKOマウスを作製し、その病態等について解析する計画であったが、予定通りに解析が進んでいる状況である。
ダブルKOマウスを用いた行動試験を行うと共に、CRISPR/Cas9システムを用いたTFEB KOモデル細胞を作製して、神経細胞死に関する詳細なメカニズムを解析する予定である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
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