研究課題
本研究では、リソソーム蓄積がTranscription Factor EB (TFEB)の発現上昇及び活性化を引き起こすことで、オートファジーの亢進とオートリソソーム形成異常に繋がり、その結果として神経細胞死を起こしていると考え、リソソーム病における病態発現メカニズムを明らかにすることを目的とした。平成29年度は、平成28年度に引き続き、共同研究先であるTelethon Institute of Genetics and Medicine (TIGEM)で作製した脳特異的TFEB KO-Sandhoff病モデルマウスを用いて病態解析を行った。脳特異的TFEB KO-Sandhoff病モデルマウス(ダブルKOマウス:DKO)では単独KOであるSandhoff病モデルマウスと比較して神経細胞死が亢進していることが明らかとなり、さらにグリアの活性化も亢進していることが示された。また、オートファゴソームの増大及びリソソームの減少が観察された。これらの結果より、リソソーム病においてリソソーム制御因子であるTFEBは、リソソームの新生を引き起こしてオートファゴソームとリソソームのバランスを整え、オートファジー異常を回避していることが明らかとなった。また一方で、神経炎症によりTFEBが発現上昇しているメカニズムを解明するために、神経細胞モデル(SH-Sy5Y)に対してTNFαを処理し、阻害剤を用いた実験を進め、発現メカニズムのシグナル経路を明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
平成29年度は、脳特異的TFEB KOマウスとリソソーム病モデルマウスの交配により得られたダブルKOマウスの病態等について解析し、予定通りに解析が進んでいる状況である。また、リソソーム病において発現上昇しているTFEBについて、発現上昇メカニズムの解析を進めており、あるシグナル経路が重要であることを明らかにした。これらから、概ね順調に進展していると判断している。
TFEBだけでなく、TFEファミリーの一つであるTFE3のKOマウスを用いて新にダブルKOマウスを作製し、病態解析及び行動試験を行う予定である。また、CRISPR/Cas9システムを用いたTFEB及びTFE3のKOを神経系細胞において行い、さらにリソソーム病酵素のKOも行うことで、リソソーム病におけるTFEファミリーのKOモデル細胞を作製する。これにより、リソソーム病におけるTFEファミリーが関連した神経細胞死に関する詳細なメカニズムを解析する予定である。一方で神経炎症によりTFEBが発現上昇を起こすメカニズムについても解析を進める予定である。これらについては、今年度中に論文投稿を行う予定である。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (21件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件) 備考 (2件) 産業財産権 (1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
Journal of Japanese Biochemical Society
巻: 90 ページ: 60-68
10.14952/SEIKAGAKU.2018.900060
http://www.tokushima-u.ac.jp/ph/faculty/labo/btc/
http://pub2.db.tokushima-u.ac.jp/ERD/person/124430/profile-ja.html