今年度は、新生仔羊10頭を用いて実験を行った。胎児羊同様に、それぞれにNIRSとEEGを大脳皮質感覚野部位の頭部に装着し、正中神経に電気刺激を加えた。電気刺激は、1.8,4.8,7.8秒と3種類の長さの異なる刺激を与え、その刺激時間と脳循環反応の関係を調べた。その結果、短い刺激では、反応はほとんど見られなかったが、刺激時間の延長と共に、刺激後の酸素化Hb上昇が顕著にみられ、その上昇のピークと血圧上昇のピークは一致した。そのため、刺激による血圧上昇が、脳循環に影響を与えていることが考えられた。これは、胎児羊では認めなかった反応であることから、胎盤がつながっている胎児羊では、この反応が見られない理由として、痛みの経路が機能的に未発達である事、また、痛みを緩和する物質が胎盤から胎児へ流入する(ステロイドホルモンなど)ことが考えられた。このように新生児では、出生後に急速に痛みの経路が発達・確立することが示唆された。
|