研究課題/領域番号 |
15KK0313
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
森島 真幸 徳島大学, 病院, 特任講師 (40437934)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2018
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キーワード | 心房細動 / microRNA / ミトコンドリア障害 / イオンチャネル |
研究実績の概要 |
我々は、個体レベルでmiR-30dが心房細動の病態形成にどのように関わるかを解析する目的で、miR-30d過剰発現ラットを作製した。当初は陽性個体が数匹得られ順調に繁殖が進んでいたが、継代がうまくいかず出生した仔が脆弱であるため生存しないことがわかった。特に、miR-30d陽性のオスはより脆弱で短命であるため継代及び系の樹立が困難であることがわかった。このため、我々は申請書にも記載したとおり同ラットの作製時に構築した心筋特異的miR-30d過剰発現プラスミドを大量培養・精製して、正常ラットの頚静脈から注入しex vivoで心電図記録を行い不整脈の発生頻度を評価した。miR-30d過剰発現プラスミドを投与した群では投与前後で心電図波形やパラメータに変化はなく不整脈の発生は認められなかった。動物実験と並行して、生体内の微細環境を模した心筋細胞培養システムを新たに構築し心房細動による酸化ストレスが心房筋ミトコンドリア機能障害を引き起こすメカニズムの解明を試みた。この方法を取り入れることで、遺伝子改変ラットを用いた実験系とほぼ同等の成果を上げることが可能であると考えられる。心房細動の発症や持続時の心筋細胞障害対策の鍵となるミトコンドリア機能に着目し、培養細胞を用いた生体外における実験系で、ストレス環境下にある心筋細胞のミトコンドリア機能を評価する系を作成する必要があると考えた。本研究では、心筋細胞のミトコンドリア機能評価の専門家であるDrexel大学のHarpreet Singh博士と、心筋細胞を用いたバイオエンジニアリングの専門家のYasha Kresh博士の下で実験技術を学び、当プロジェクトに必須の心筋細胞評価系の構築を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
心房細動発症のメカニズムの一端を解明するために、miR-30dが病態心筋のミトコンドリア機能に対してどのような作用を示すかについて国際共同研究先のDREXEL大学において新たに開発された初代培養細胞を用いた評価系により生体内の微細環境を模した心筋細胞培養システムを構築し、心房細動による酸化ストレスが心房筋ミトコンドリア機能障害を引き起こすメカニズムの解明を試みた。心筋の生理学的硬度を模したポリアクリルアミドゲル上で培養した心筋細胞は、酸化ストレスによる心筋ミトコンドリア障害をより正確にとらえることができた。さらに細胞内過負荷(イオノフォア、タプシガルギン)、AngII並びにPKC賦活剤などの刺激による心筋の自発的拍動の異常はゲル上の心筋細胞でより顕著にみられたが、miR-30dを過剰発現させた細胞ではみられなかった。以上の結果より、miR-30dは心筋細胞障害時に発現が亢進することで心筋保護作用を示す新たな分子である可能性が示唆された。さらに、新しい細胞機能評価系の構築により、心房細動時のミトコンドリア障害に対してmiR-30dが保護的に働く因子であることも見出すことができたためおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
心筋特異的miR-30d過剰発現ラットの作製と継代を引き続き行う。さらに、我々が新たに構築した新しい細胞培養システムを取り入れて、ストレス環境下にある心筋細胞のミトコンドリア機能を生体外でより正確に評価し心房細動発症後の心筋細胞障害対策の鍵となるミトコンドリアにおける新規標的分子の探索を行う。
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