研究実績の概要 |
これまでに、ヒト組織を構成する複数の細胞間の立体的な相互作用を再現することで機能臓器の創出技術を開発してきた。すなわち、ヒトiPS細胞由来肝内胚葉、血管内皮細胞、間葉系細胞を一定の条件で共培養することにより自律的な細胞凝集が生じ、肝臓原基(iPSC肝芽)が誘導されることを明らかにした(Takebe T, Sekine K et al, Nature, 2013)。 そこでこの技術を立体的ながん組織の人為的な再構成に応用し、患者由来プライマリ膵癌細胞より間質を含むヒト膵癌組織(膵癌オルガノイド)を再構成することに成功した。 本研究では、独・マックスプランク研究所Treutlein博士の元でCamp博士らとともにヒト立体臓器のシングルセルRNAシークエンス解析を実施した。構成細胞をそれぞれ別々に培養した際と、複数の細胞種が混ぜ合わされ立体的な組織が構成される際に初めて発現が見られる分子を詳細に解析することにより、細胞間相互作用に関わるシグナル候補を明らかにした。このシグナル候補分子の情報を元に機能解析を実施し、実際に複数のシグナル候補が立体的な細胞間相互作用に寄与することを明らかにした(Camp JG, Sekine K et al, Nature 2017, Ayabe H, Sekine K, Camp JG, Treutlein B et al, Stem Cell Reports, 2018)。更に、ここで得られた複数細胞間で見られる立体的な相互作用をより詳細に解析する目的で、相互作用に関わる分子の機能解析に向け、遺伝子改変技術を用いた網羅的スクリーニング手法の確立へ向けた共同研究に着手し、基礎的な検討を実施した。当初シンシナティ小児病院への渡航も予定していたが、研究の進捗によりドイツおよび日本国内での実施が可能となったため実施しなかった。
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