研究実績の概要 |
これまでに、発達期の視床皮質投射経路(VB→L4)、および大脳皮質4層から2/3層経路(L4→L2/3)における可塑的変化を電気生理学的手法により明らかにしてきた。カンナビノイドは、VB→L4, L4→L2/3におけるスパイクタイミング可塑性ー長期抑圧(STDP-LTD)に関与し、さらにカラム構造の形成に重要な影響があることが示された。以前より、内因性カンナビノイドには、アナンダマイド(AEA)と2アラキドノイルグリセロール(2-AG)が候補としてあげられ、いずれなのかという、大変根本的な問題点が未だに判明していなかった。よって我々は、東京大学医学部との共同研究を行い、2-AGの合成酵素を遺伝的に欠損したDGLα欠損マウスを用いて、VB→L4, L4→L2/3における発達期可塑性における内因性カンナビノイドの役割を決定することを試みた。DGLα欠損マウスでは、VB→L4, L4→L2/3のSTDP-LTDが欠損し、カラム構造が正常に形成されていなかった。今回の国際共同基金では、渡航先のインディアナ大学Hui-Chen Lu博士、さらにカンナビノイド研究の第1人者であるKen Mackie博士の協力を得て、日本では入手の難しいΔ9-THCを、生後2週目マウスに対して腹腔投与し、形態的異常が示されるかどうかを確認し、DGLα欠損マウスにおける効果と比較検討した。その結果Δ9ーTHC、WIN(カンナビノイド受容体作動薬)投与群では、4層細胞の軸索全長、及び2/3層内に侵入している軸索の長さが優位に減少していた。このことから、4層細胞の軸索終末に発現しているカンナビノイド受容体は、4層細胞の軸索形成をコントロールしている可能性が示された。
|