研究実績の概要 |
大脳皮質の臨界期のメカニズムを明らかにするために、以下の点を明らかにした。 (1)臨界期には、プレポストの発火タイミングに依存するタイミング可塑性(STDP)が重要であることが示されていたが、出生直後の視床→L2/3細胞には強化型STDP-LTPのみが出現し、その後、弱化型STDP-LTDに変化していった。このとき皮質内L4→L2/3細胞では、強化型STDP-LTPのみが発現していた(J.Neurosci, 2012)。VB-L2/3におけるSTDP-LTDの誘導は、L4-L2/3におけるSTDP-LTPを誘導することを示した。この時期、視床-皮質投射では緻密化が、4層-2/3層投射では過形成が起こる。よって、異なる経路のSTDPが協調して回路形成が進む可能性を示した(Eur J Neurosci, 2016)。(2)L4→L2/3におけるSTDP-LTDは、カンナビノイド(CB)依存性であることが示されていたが、視床→L2/3、L4→L2/3投射のいずれのシナプスでもCBを介し、内因性カンナビノイド(eCB)がカラム様投射領域の制御に重要である事を明らかにし(J.Neurosci, 2016)、これら一連の成果はreviewとして発表した(J. Neurosci, 2019, Viewpoints)。(3)eCBは、視床→L2/3、L4→L2/3細胞において軸索の投射領域を変化させる。正常発達では、L4→L2/3細胞は、余分な軸索を刈り込むことによりカラム様投射を形成する。今回インディアナ大学との共同研究では、外因性にカンナビノイドTetrahydrocannabinol,THCを投与することにより、L4→L2/3細胞の軸索投射が変化するかどうか検討した。予想通りの結果が得られ、THC投与により軸索が短くなり、eCBには軸索を刈り込む作用があることが確かめられた。
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