研究課題/領域番号 |
15KK0324
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
南保 明日香 北海道大学, 医学研究院, 准教授 (60359487)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2018
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キーワード | Epstein-Barrウイルス / エキソソーム / microRNA / 次世代シーケンス |
研究実績の概要 |
細胞外小胞エキソソームは、マイクロRNA (miRNA)を含む様々な因子を標的細胞へ輸送することで多様な生理機能を示す。Epstein-Barrウイルス(EBV)はヒトγ-ヘルペスウイルスに属する普遍的な2本鎖DNAウイルスであり、B細胞および上皮細胞に特異的に感染し、がんを引き起こすことが知られている。EBVは、BARTならびにBHRF1の2つの領域にコードされる49種類のmiRNAを発現する。 従来、EBV感染細胞から放出されるエキソソームが、miRNAをはじめとしたウイルス因子を標的細胞に運搬することが報告されているが、その生理的役割については不明な点が多い。研究代表者はこれまで、EBV感染B細胞から放出されるエキソソームを取り込んだ標的上皮細胞において、非感染細胞由来エキソソームと比較して、より顕著な細胞増殖および接着因子発現が誘導されることを明らかにした。本研究では、標的細胞におけるエキソソームの役割を分子レベルで解明することを目的として以下の検証を行った。 従来の報告から、EBV感染によって細胞内のmiRNA発現様式が変動することが知られているが、感染細胞から放出される細胞外小胞エキソソームに内包されるmiRNAの発現様式についてはほとんど報告がない。そこで本研究では、同一のバーキットリンパ腫患者から樹立された感染様式の異なるB細胞株を用いて、次世代シーケンシングにより、EBV感染がエキソソーム由来miRNAの発現様式に与える影響を検討した。その結果、EBV感染によってエキソソーム産生ならびにエキソソームに内包されるmiRNAの発現様式が変動することが明らかになった。以上の結果から、EBV感染細胞由来エキソソームに選択的に内包されるmiRNAが、標的細胞の形質変動において機能する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、感染様式の異なるB細胞の培養上清から超遠心法によりエキソソームを単離し内包される宿主およびEBV由来miRNAを同定し、内包されるmiRNAについて次世代シーケンシングにより解析を行い、細胞由来miRNAとの比較を行った。その結果、EBV感染細胞において、エキソソーム産生の場である多胞体形成ならびにエキソソーム産生量が顕著に増強していた。また、感染細胞由来エクソソームに、複数のウイルスおよび細胞由来miRNAが選択的に内包されることが明らかになった。さらに、B細胞と共培養した非感染上皮細胞に、特異的なEBV由来miRNAが運搬されることを証明した。以上の結果から、EBV感染細胞由来エキソソームに選択的に内包されるmiRNAが、標的細胞の形質変動において機能する可能性が示唆された(論文投稿中)。 さらに、本研究では上皮系EBV関連がん発症およびウイルス生活環におけるエキソソームの役割を解明することを目的として、以下の検討を行った。従来、EBV感染B細胞と上皮細胞との共培養によって、遊離EBVを用いた感染と比較して、より効率良く上皮細胞にEBVが感染することが報告されている。すなわち、細胞間接触を介するウイルス伝播が上皮細胞への主要な感染経路である可能性が示唆されている。研究代表者はこれまで、宿主の細胞内情報伝達系および膜輸送系がこの過程に関与することを明らかにしてきた。一方、この過程におけるエキソソームの役割については全く明らかになっていない。そこで、本研究において、細胞間接触を介する上皮細胞へのEBV伝播におけるエキソソームの役割を解明する目的で種々の検討を行った。その結果、B細胞、上皮細胞由来エキソソームは部分的に、このプロセスに関与することが明らかになった(論文投稿中)。
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今後の研究の推進方策 |
1. 同定されたエキソソームmiRNAの機能解析:次世代シーケンスによる解析結果から、EBV感染細胞由来エキソソームにおいて、がん発症の促進および抑制に関与するmiRNAが内包されることが明らかになった。このことから、EBVは発がんに関わるmiRNAをEBV感染細胞の周縁細胞に運搬すると共に、がん抑制に関わるmiRNAを積極的に排出することで、ウイルス感染細胞の増殖維持とEBV関連がん発症と進展に貢献することが示唆された。今後は、特異的miRNAの機能をアンチセンスRNAを用いて抑制した細胞を作出し、EBV関連疾患における各種miRNAの役割を細胞および実験動物モデルを用いて検証する。
2. 細胞間接触を介するEBV伝播におけるエキソソームの役割:これまで、細胞間接触を介するEBV伝播機構において、エキソソームが部分的に関与することを解明した。しかしながら、この過程におけるエキソソームmiRNAの機能については全く不明であるため、1.で作出した細胞を用いて詳細な検討を行う。
3. EBV関連がんを予測・診断するための有効なバイオマーカーの有用性の検討:EBV関連がんを予測・診断するための有効なバイオマーカーは未開発であることから、国際共同研究の受け入れ研究所であるマッカードル癌研究所と連携することで、EBV感染細胞由来エキソソームに特異的に内包されるmiRNAのバイオマーカーとしての有用性について検討を行う。
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