研究課題
ワクチンのメカニズムである免疫記憶の柱の一つは、病原体を排除する抗体を産生する形質細胞が長期に渡って骨髄で生存し、血清中に抗体を産生することにある。形質細胞の長期生存機構を解明するため、長期生存形質細胞が存在する骨髄と、短期生存形質細胞で構成される脾臓の形質細胞を分取し、1細胞RNA-sequencingを行った。Gene Ontology 解析の結果、骨髄で脾臓よりも発現が高かった遺伝子群には、蛋白質代謝やリボゾーム形成に関わる遺伝子が有意に濃縮していた。骨髄で遺伝子発現が高く、特徴的な発現を有する遺伝子として、亜鉛を結合するメタロチオネイン (MT) 1とMT2、抗炎症作用のあるSLPIを同定した。詳細な解析の結果、SLPIはIgG型の形質細胞で発現が高く、IgA型では低く、IgM型ではほとんど発現していないことが高いことがわかった。脾臓では、骨髄に比べて、IgM型の形質細胞が多く存在するため、SLPI遺伝子が骨髄で発現が高いのは、アイソタイプの違いを反映している可能性が考えられた。一方で、MT1とMT2は抗体のクラスに関係なく、骨髄の形質細胞で高い発現を示した。また骨髄のMT1とMT2の遺伝子発現は非常に高い相関を示した。骨髄のMT高発現細胞と低発現細胞の遺伝子発現をscRNA-seqで比較したところ、MT高発現細胞では、抗酸化作用のあるHO-1や小胞体ストレスを低減するHerpud1、鉄を貯蔵するFerritinの発現が有意に高かった。さらに、MTの発現は、形質細胞の長寿命に重要なIL-6の刺激で上昇した。これらのことから、骨髄のMT高発現形質細胞は、生体内で生存シグナルを受けた細胞であることが予測され、長期生存にあたって、形質細胞の抗ストレス機能が高まっている可能性が考えられた。
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Int Immunol.
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1093/intimm/dxy018
Cell Reports
巻: 18 ページ: 2401-2414
10.1016/j.celrep.2017.02.029