研究課題
グルココルチコイド(GC)-グルココルチコイドレセプター(GR)軸をカギとした遺伝子転写制御を介した骨格筋タンパク質代謝調節(Shimizu NらCell Metabolism 2011)は、骨格筋(Muscle)-肝臓(Liver)-脂肪組織(Adipose)連携(MLA軸)によって、全身の貯蔵エネルギー物質バランス、エネルギーフロー制御の重要な一翼を担っていることを明らかにした(Shimizu NらNature Communications 2015)。本研究では、骨格筋代謝制御におけるGCの作用機構と生理的な意義を、GRを介した遺伝子発現制御機構の解析、とくにresistance exercise(筋力負荷)による筋肥大のカギ因子PGC1alpha4およびendurance exerciseによる好気的代謝亢進のカギ因子PGC1alpha1がこの機構において果たす役割の解析を基軸として究明する。また、メカニカルストレスすなわち運動による全身エネルギー代謝制御の変容機構において、MLA軸が果たす役割を示し、Mechano-Metaboカップリングの分子的基盤を明らかにすることを目的としている。平成28年度は、①組換えアデノウイルスを用いたPGC1alpha1、PGC1alpha4強制発現系によるin vitro実験系の基盤を確立、②合成グルココルチコイドを投与した骨格筋特異的PGC1alpha4トランスジェニックマウスの骨格筋におけるmRNA発現解析を開始したとともに、③骨格筋量を規定するプロセスのひとつ、タンパク質分解の亢進と相関する新たな血中因子マーカー候補を同定し、④筋力負荷による筋肥大をマウスに効率よく起こさせるデバイスとプロトコールの確立を達成した。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度は、5月13日~5月23日および10月4日~11月25日の期間に渡航した。海外共同研究先への渡航中に実施した実験によって得た試料は、渡航先(欧州)と国内所属研究機関の双方で連携のもと並行して解析中である。筋力負荷による筋肥大を効率よく起こさせる新規デバイスとプロトコールは、マウス個体におけるエネルギー代謝と筋量・筋代謝との関係解析を飛躍的に推進する可能性が高い。また、渡航中の実験の過程で、骨格筋におけるグルココルチコイド作用の結果である筋萎縮に関連する、新たな血中マーカー因子の候補を同定した。その発現制御と、骨格筋GR-骨格筋PGC1alphaクロストークとの関係の解析を行うにあたり、海外共同研究先とともに、欧州にて当該因子の機能を研究中のグループと共同で推進する体制を整えつつある。
平成29年度は、骨格筋特異的PGC1alpha4トランスジェニックマウスを渡航先より持ち帰り、かかるマウスを遺伝的背景に持つ骨格筋特異的GR遺伝子破壊マウスを作製する。マウスの筋力負荷トレーニングと、PGC1alpha4の活性が、GR制御下遺伝子発現に与える影響の解析を推進する。さらに、肝臓、白色脂肪組織におけるmRNA発現プロファイル、血漿中アミノ酸成分、血漿FGF21濃度、および【現在までの進捗状況】にて前述の新規マーカ因子候補の濃度、各組織中の栄養物質(グリコーゲン、トリグリセリド等)含有量の解析を行う。PGC1alpha4によるGR標的遺伝子発現の鈍化が、全身エネルギーフローの変容を、血中アラニン量依存的に引き起こす可能性を検証する。
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Scientific Reports
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Journal of Neuromuscular Diseases
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