本研究では高次視覚情報処理機構の機能的・解剖学的構造基盤の一端を明らかにすることを目標として、ヒトfunctional MRI(fMRI)を用いて頭頂葉を中心としたaction observation機能およびそのネットワークについて詳細に調べている。2016年度の最後にパイロットスタディとして行った研究を一部改変し、パルマ大学の研究者の協力を得て継続中である。 「オレンジ色」または「白色」のピンポンボールに対して演者が「押す」または「はじく」のどちらかのactionを施行している視覚刺激を動画で用意し、被験者にはその動画の中で演者が行った動作およびボールの色に注目してもらい、どちらの色のボールか、どちらの動作を行ったかを回答してもらう二肢強制選択課題を用いてfMRIの撮影を行った。27人の被験者の撮影を行った。撮影中に固視が悪くサッケードが多かった被験者、体動が大きかった被験者、課題の正答率が90%以下の被験者は解析から外した。結果、総計20名の被験者からデータが得られた。これら20名の被験者でSPM8を用いて統計的集団解析を行ったところ、後頭側頭葉及び頭頂葉を中心した領域に有意差が認められたが、動画の視覚刺激の色に注目した場合と演者の動作に注目した場合とでは、近接しているが異なった領域が活動していることが観察され、注目する対象により脳内で活動するネットワークが異なることが推測された。これらの結果をもとにパルマ大学のGuy A Orban教授とも討論を重ね、今回の課題の限界点および得られた結果と既知のaction observation networkとの整合性につき考察を深めた。
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