患者由来腫瘍異種移植片モデルを用いた腺様嚢胞癌の進展機序の解明（国際共同研究強化）

2019 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15KK0334
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 安藤 瑞生 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (60511467)
• 研究期間 (年度): 2016 – 2019
• キーワード: エピゲノム

研究実績の概要

本研究では基課題を発展させ、発癌関連遺伝子の転写調節に関する基礎研究を拡張することを主な目標とした。腺様嚢胞癌に加えて扁平上皮癌をゲノムおよびエピゲノムの観点から統合的に検討するため、ヒトの癌組織および正常組織を用いて、Exome-seqによる遺伝子変異解析、RNA-seqによる遺伝子発現解析、MBD-seqによるDNAメチル化解析、さらにヒストン修飾解析のためクロマチン免疫沈降シーケンス (ChIP-Seq) のデータ解析を行った。患者由来の原発腫瘍塊をマウスに直接移植するPDX (Patient-Derived Xenograft) モデルから得られた腫瘍組織も解析に使用した。腺様嚢胞癌の他、ヒトパピローマウイルス(HPV)関連中咽頭癌を主な対象とし、遺伝子プロモータ領域や転写開始点 (TSS; Transcription Start Site) のエピゲノム変化に注目してデータ解析を行った。HPV関連中咽頭扁平癌と腺様嚢胞癌の比較や、公共データベースを用いた検証、分子生物学的手法による検証実験も行った。 これらの解析により、HPV関連中咽頭癌において正常組織と癌組織では遺伝子発現に関連するDNA変異メチル化の部位が異なることを発見した。具体的には、正常組織では遺伝子プロモーター領域が主である一方、癌組織においてはTSSが主なターゲット領域となっていた。同時にTSSににおける抑制性のヒストン修飾の変化も生じていた。また、HPV関連中咽頭癌コホート中に高メチル化腫瘍群が存在することも明らかにした。しかし腺様嚢胞癌ではこれらの知見は明らかで なく、癌腫による差を反映していると考えられた。

研究成果

• [国際共同研究] カリフォルニア大学サンディエゴ校(米国) (2016)
  • 年月日: 2016-04-09 – 2017-06-30
  • 国名: 米国
  • 外国機関名: カリフォルニア大学サンディエゴ校
  • 主な海外共同研究者名: Joseph Califano
  • 部局: Moores Cancer Center
  • 職名: Director
• [雑誌論文] Rational genomic optimization of DNA detection for human papillomavirus type 16 in head and neck squamous cell carcinoma (2020)
  • 著者名/発表者名: Saito Y, Favorov AV, Forman M, Ren S, Sakai A, Fukusumi T, Liu C, Sadat S, Ando M, Xu G, Khan Z, Pang J, Valsamakis A, Fisch KM, Califano JA.
  • 雑誌名: Head & Neck 巻: 42 ページ: 688～697
  • DOI: 10.1002/hed.26041
  • 査読あり / 国際共著
• [雑誌論文] Chromatin dysregulation and DNA methylation at transcription start sites associated with transcriptional repression in cancers (2019)
  • 著者名/発表者名: Ando M, Saito Y, Xu G, Bui NQ, Medetgul-Ernar K, Pu M, Fisch K, Ren S, Sakai A, Fukusumi T, Liu C, Haft S, Pang J, Mark A, Gaykalova DA, Guo T, Favorov AV, Yegnasubramanian S, Fertig EJ, Ha P, Tamayo P, Yamasoba T, Ideker T, Messer K, Califano JA.
  • 雑誌名: Nature Communications 巻: 10 ページ: 2188
  • DOI: 10.1038/s41467-019-09937-w
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [雑誌論文] Mutation of chromatin regulators and focal hotspot alterations characterize human papillomavirus-positive oropharyngeal squamous cell carcinoma (2019)
  • 著者名/発表者名: Haft S, Ren S, Xu G, Mark A, Fisch K, Guo TW, Khan Z, Pang J, Ando M, Liu C, Sakai A, Fukusumi T, Califano JA.
  • 雑誌名: Cancer 巻: 125 ページ: 2423～2434
  • DOI: doi: 10.1002/cncr.32068
  • 査読あり / 国際共著
• [雑誌論文] A novel splice variant of LOXL2 promotes progression of human papillomavirus-negative head and neck squamous cell carcinoma (2019)
  • 著者名/発表者名: Liu C, Guo T, Sakai A, Ren S, Fukusumi T, Ando M, Sadat S, Saito Y, Califano JA.
  • 雑誌名: Cancer 巻: 126 ページ: 737～748
  • DOI: 10.1002/cncr.32610
  • 査読あり / 国際共著
• [学会発表] HPV関連中咽頭癌のエピゲノム：DNAメチル化およびヒストン修飾のゲノムワイド解析 (2019)
  • 著者名/発表者名: 安藤 瑞生、齊藤 祐毅、山岨 達也
  • 学会等名: 第120回日本耳鼻咽喉科学会
• [学会発表] シンポジウム「トランスレーショナルリサーチはどう進んでいるか」：頭頸部癌クリニカルシーケンスの経験とゲノム医療時代の展望 (2019)
  • 著者名/発表者名: 安藤瑞生
  • 学会等名: 第43回日本頭頸部癌学会
• [備考] ヒトパピローマウイルス（HPV）関連中咽頭がんのゲノム・エピゲノム異常の全体像を解明
  • URL: https://www.h.u-tokyo.ac.jp/press/20190517.html