顎欠損患者の発話におけるこれまでの研究結果をもとに,国内でさらなる患者音声データの採集と解析を行い,音声の音響学的特徴と欠損形態との関連を明らかにすることができた.またドイツの研究チームと共同で研究することにより,顎顔面欠損模型をデジタル化する様々な手法を検討することができた.これらの結果についてInternational Association for Dental Research とInternational Society for Maxillofacial rehabilitationで発表したところ,多くの質問を受け,反響を呼んだ.特にドイツのチームと共同で行ったことに関して,本研究は世界的にも症例数の多い本学の顎顔面補綴治療の実績と,常に最先端の研究が行われているドイツのデジタル歯科技術との融合があって初めて可能な研究となっているため,国際的にも評価された.論文は歯科補綴系のトップジャーナルに掲載された.本年度には国内の学会にての発表も行い,今後のデータ活用に関して活発な討議が行われた.現在その他の結果についても論文を作成中である.今後の展望としては,新たにディープラーニングの手法を駆使し,得られた結果を人工知能によって結びつけることを計画している.それにより顎欠損患者のリハビリテーション法について検討したり,顎欠損患者の発話を支援するソフトウエアを開発することが可能となり,患者の顎欠損データを入力することで発話に関するプログラムを選択できる総合的なシステムが作成可能であると考える.
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