研究課題/領域番号 |
15KK0338
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
多部田 康一 新潟大学, 医歯学系, 助教 (20401763)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2017
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キーワード | 歯学 / 免疫学 |
研究実績の概要 |
本研究課題においては、基盤研究B(高付加価値型歯周炎ワクチン―DNAオリガミとイミダゾキノリンによるIgA誘導―;H27-29)を基課題として発展させるために、ENUマウスミュータジェネシスを応用することとした。本アプローチをとる意義は既知の情報にとらわれずにフェノタイプ解析と関連遺伝子の新規同定を行うことにある。申請時計画として、P. gingivalis口腔感染及びDNAオリガミ体・イミダゾキノリン誘導体の口腔投与によりマウス遺伝子変異体群における唾液・血清中IgA産生のHigh responder及びLow responderの検出を行い、ポジショナルクローニングにより変異遺伝子(責任遺伝子)の同定・解析を行うこととした。これまで渡航後6か月間における研究結果として、約8,000頭のENUミュータントマウスにおける血清についてIgA濃度を測定し非感染時におけるIgA高産生マウス(Hygia, Luna)、低産生マウス(Tuberose)を発見し、責任遺伝子の同定を行ってきた。これらの遺伝子については、これまでIgA産生と関連する報告がなされておらず、KOマウスの作成によりその確認作業を行っている。また、唾液中Secreted IgA産生について高産生、低産生をフェノタイプとするマウスの検出作業も同時に行っている。 ワクチン開発においては,その作用機序の重要性とともに反応の個体差が重要性を持つ。すなわち応答性をチューンする分子群が存在し多分にゲノム上のSNPが影響を与えていると予測される。これらの分子群の同定は患者における副作用の予測、ワクチンの構造,添加物の工夫による機能・効果のチューニングを可能とし、安全かつ効果的なワクチン・核酸医薬開発のみならず、新たな標的分子治療のターゲットについて情報をもたらす可能性を持つと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ENUミュータジェネシスによるマウス遺伝子変異体を渡航先研究室より受けている。当初P. gingivalis口腔感染及びDNAオリガミ体・イミダゾキノリン誘導体の口腔投与によりマウス遺伝子変異体群を投与し、唾液・血清中IgA産生のHigh responder及びLow responderの検出を行う予定としたが、ENUミュータジェネシスによるマウス遺伝子変異体のスクリーニングにおいて複数プロジェクトが同施設で進行していることから、細菌感染及びNAオリガミ体・イミダゾキノリン誘導体の投与が他のスクリーニング結果に影響を与えることが考えられた。それを回避し、同等の研究成果を得られる代替計画として、非感作状態下の血清中IgA及び唾液中Secreted IgA産生に関するフェノタイプを検出することで候補遺伝子を同定する実験計画に修正した。同時にポジショナルクローニングにより変異遺伝子(責任遺伝子)の同定・解析を行う予定であったが、これについては同施設に新たに導入されたMutagenetix programを用いてより速やかにポジショナルクローニングを経ずに変異遺伝子を検出することが可能となったため、それを応用することとした。最初の6ヵ月をスクリーニング期間とし、1日50匹,6ヵ月で6,000頭を解析することで陽性ミュータントを得ることを計画したが、計画変更の副次効果として、計画以上の約8,000頭のENUミュータントマウスにおける血清についてIgA濃度を測定し非感染時におけるIgA高産生マウス(Hygia, Luna)、低産生マウス(Tuberose)を検出し、唾液中SIgAに関しては高産生フェノタイプの変異体(Yummy)を検出するに至り、計画にて期待された以上の成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
血清IgA高産生マウス(Hygia, Luna)、低産生マウス(Tuberose)、唾液中SIgA高産生フェノタイプの変異体(Yummy)について、原因遺伝子のCRISPR KOマウスを作成、または入手可能な変異体についてはそれを購入し、ミュータントマウスのフェノタイプと合わせて解析をおこなうことで原因遺伝子の機能同定を図る予定である。また凍結胚を作成し、本件研究の終了時に所属機関へ輸送し解析を継続するための手続きを含めた準備を行う。具体的計画は基本的な免疫学的フェノタイプの解析を行っており、その結果に応じ決定する。
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