研究課題
心房細動を維持するエンジンである渦巻き型旋回興奮波(ローター)の重要な特徴であるさまよい運動特性に着目し、臨床電気生理検査で使用される多電極・アブレーションカテーテルから得られた電位のみからローターを検出するシステム:RoDET(Rotor detection program)を新規に作成し、基課題で提唱した「ローター自体をターゲットにするのではなくローターの移動経路遮断と投錨(定在)領域への心筋焼灼が、心房細動を停止させ、細動の慢性化を未然に防ぐ」という画期的治療法を飛躍的に発展させ、臨床応用するための技術基盤を構築することを目標として研究を開始している。当年度は電極マッピングデーターのみからローターの存在可能領域を同定する手法(興奮前面の分散を用いる手法)の確立に成功した。当初提唱したRoDET(ローターの軌跡と投錨領域を自動検出するプログラム)はまだ完成していないが、提唱した手法の有効性が臨床研究においても確認されたため、同プログラムの完成を急ぎたい。ローターのさまよい運動が梗塞境界領域に制限されることが予想される心房梗塞モデル(Meandering:小)を用いて、興奮前面の分散を電極マッピング・コンピューターシミュレーションにて評価し、通電領域を決定し、実際に通電・焼灼療法を実施した。共同研究を実施中のフランスのグループとともに同手法を用いた臨床研究を実施し、高率に心房細動が停止すること、さらに従来法と比較し短時間かつ安全に同手法を実施できることを確認している。前記の結果をJ Am Coll. Cardiol. 2017にて報告したが、新たな切り口から導き出された局所電位の評価手法に対する国際的な反響は大きく、いくつかの招待講演(ロードアイランド病院、ブラウン大学:米国、国内5回)も実施している。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究メインに当たる電極マッピングデーターのみからローターの存在可能領域(軌跡と投錨領域)を同定する手法(RoDET)の基本概念の確からしさは、臨床研究の結果から確認されている。同手法に関して欧米一流学会誌(J Am Coll. Cardiol.2017)に既に報告しているため、当初の計画以上に同プロジェクトは進展していると考える。
当初の研究予定と比較し、かなり順調に研究が進展している。既に本プロジェクトの基本概念を学術誌に報告しており今後は、新たな治療法の切り口の発見を含めて検討していきたい。渡航先のJerome Kalifeが専門としている光学的治療法を含めて検討していきたい。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件、 招待講演 7件)
J Am Coll. Cardiol
巻: 69(3) ページ: 303-321
10.1016/j.jacc.2016.10.065.