心房細動を維持するエンジンである渦巻き型旋回興奮波(ローター)の重要な特徴であるさまよい運動特性に着目し、臨床電気生理検査で使用される多電極・アブレーションカテーテルから得られた電位のみからローターを検出するシステムを作成する事を第一の目標とする。基課題で提唱した「ローターの移動経路遮断と投錨(定在)領域への心筋焼灼が、心房細動を停止させ、細動の慢性化を未然に防ぐ」という仮説を検証し、臨床応用のための技術基盤を構築することを最終目標として研究を継続している。本申請の核をなすローターの新たな検出手法(位相分散解析)を発見し、既に論文としてまとめ報告した(AJP2017)。更に、比較的安定したさまよい運動をするローターで維持される心房梗塞誘発心房細動モデルを確立し、渡航先のブラウン大学で解析・論文作成を行い公表した(Circ Arrhythm Electrophysiol.2018)。当初の研究計画では、大型動物実験は海外施設での施行のみを予定していたが、研究計画以上に本研究を進展させていくことを考え、東京大学医療福祉工学開発評価センターに我が国唯一の大型動物(ブタ)まで評価可能な光学・電極同時マッピングシステムを構築した。ブタ圧負荷心房細動モデルにおいて、細動を維持するローターの描出にも成功し、現在詳細なデーター解析中である。申請者が専門とする光学マッピングは、不整脈を直接眼で診ることのできる簡便な手技であるにもかかわらず、日本におけるこの分野からの研究報告数は基礎電気生理学者の不足から著しく少ないのが現状である。国際共同研究加速基金の目的に則って、構築した国内外の学術コミュニティメンバーと共にさらなる研究の進展を目指す。
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