研究課題/領域番号 |
15KK0343
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
高浪 景子 国立遺伝学研究所, 系統生物研究センター, 助教 (70578830)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2018
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キーワード | 痒み / ガストリン放出ペプチド / 標的細胞ノックアウト法 / 行動薬理学解析 / 神経活性化 / 脊髄 |
研究実績の概要 |
今年度は、昨年度に引き続き、ガストリン放出ペプチド(GRP)受容体遺伝子改変ラットを用い、標的細胞ノックアウト(toxin receptor-mediated cell knockout)法を用い、毒素投与によるGRP受容体発現ニューロン選択的破壊の条件検討を実施した。脊髄くも膜下腔にジフテリア毒素またはコントロールとして生理食塩水を投与し、投与濃度の検討を行い、脊髄後角におけるGRP受容体発現細胞数の計測を行い、破壊の評価を行った。その結果、ジフテリア毒素投与によるGRP受容体発現細胞の減少傾向がみられた。しかし、当初の予想よりも消失割合が少なかったため、平行して、GRP受容体阻害剤投与を用いた解析を実施した。末梢の皮膚に各種起痒物質を投与した後、脊髄くも膜下腔にGRP受容体阻害剤投与またはコントロールとして生理食塩水を投与し、痒みの指標となる掻破行動解析を実施した。その結果、いくつかの起痒物質投与において、GRP受容体阻害剤の濃度依存的な掻破行動の減少が示され、脊髄から脳への痒みの伝達へGRP受容体が関与していることが行動薬理学的に示された。また、この遺伝子改変ラットを用い、末梢の皮膚に各種起痒物質を投与し、掻破行動中に活性化する脳、脊髄領域を調べるために、c-Fos発現解析を行った。その結果、起痒物質投与ではコントロールに比べ、起痒物質投与部位のデルマト-ム支配を行う脊髄領域において、c-Fos発現細胞の有意な増加とGRP受容体発現細胞におけるc-Fosの発現増加がみられ、痒み伝達時にGRP受容体が活性化していることが示され、行動薬理学解析と一致する結果がえられた。また、健常時と慢性掻痒時における脳-脊髄における痒み伝達機構の変化を調べるために、ラットの慢性掻痒病態モデルの作製を実施した。留学先のカリフォルニア大学デービス校において、光遺伝学による痒み伝達制御の解析手法を学んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定よりも、標的細胞ノックアウト法の条件検討に時間を費やした。また、これまで報告されている慢性掻痒病態モデル(アトピー性皮膚炎モデル、ドライスキンモデル等)の多くはマウスを用いた解析が行われてきたため、マウスでの発症モデルを参考にラットにおける病態モデルの作製に取り組んだが、体重、皮膚の厚み、免疫応答の差等により、ラットでの発症が難しく、慢性掻痒病態モデルの作製に時間を費やした。
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今後の研究の推進方策 |
カリフォルニア大学デービス校において、痒み伝達に関わる遺伝子改変動物を用い、光遺伝学と行動薬理学による脳-脊髄における痒み伝達機構の解析を実施する。また、三次元電子顕微鏡による痒みを伝達するシナプス構造解析を継続し、痒みを伝達するシナプス構造の特徴を超微形態レベルで明らかにする。
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