研究課題/領域番号 |
15KK0346
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
中野 大介 香川大学, 医学部, 助教 (30524178)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2017
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キーワード | Acute kidney injury |
研究実績の概要 |
敗血症に伴う急性腎障害(AKI)の機序解明に取り組んだ。先行した基盤研究Cにより、敗血症急性腎障害の初期乏尿は、全身性炎症とは独立した尿細管を起源とすることがわかった。この基盤研究C(初年度)では、尿細管がどのように変化してAKIを生じるかについて検討できておらず、米国Vanderbilt University Medical CenterのJens Titze教授との共同研究を行った。その結果、本来、原尿は尿細管を下流のネフロンに向けて流れて、最終的に膀胱を経て尿となるはずが、敗血症時には、近位尿細管の時点で尿細管外に漏れ出ていることを示唆する結果が得られた。In vivoイメージングにより近位尿細管において尿流速が顕著に減少し、尿細管の細胞間結合が脱落し、間質体液量が増加、そして、間質静水圧が上昇していることが明らかとなった。またこの漏出液は等張であり、間質細胞(マクロファージ、樹上細胞、T細胞)における浸透圧センサー分子の欠損マウスにおいて、AKIの重症度に全く差が確認できず、漏出の駆動力は間質側の浸透圧ではなく、糸球体ろ過圧であると考えられた。この経路を阻害する薬物を数個使用したが、腎臓にこの変化が生じた段階において、この変化に対する有効な治療法は発見できなかった。おそらく一度シグナルが発生すると、ドミノ倒し的に障害が発生するためであり、今後は、阻害薬でなく、尿細管あるいは内皮細胞に対する保護効果を増強する干渉効果のある薬物を用いて、研究を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に進行している。目的の一つであった、漏出の駆動力について、かなりの部分が解明できている。一番に想定していた間質浸透圧の増強に関しては、①漏出液が等張であったこと、②間質細胞(マクロファージ、樹上細胞、T細胞)における浸透圧センサー分子の欠損マウスにおいて、AKI重症度に全く差がみられなかったこと、以上2点から、尿の漏出は近位尿細管における等張原尿の漏出が主であり、漏出駆動力は糸球体ろ過圧と間質静水圧の差であると結論した。国内で行う基盤研究Cでは、半年でこれだけの成果を出すことは不可能であり、初年度は成功であると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、この結果により生じる尿細管間質微小環境の変化が全身性炎症に与える影響について検討していく。具体的には、腎リンパ液を回収し、尿漏出時におけるリンパ球極性変化と、その役割について検討し、急性腎障害より生じる他臓器不全との関係についても解析していく予定である。
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