研究課題
敗血症性急性腎障害(AKI)の発症機序について、科学研究費を戴き、さらには、平成28-29年度は国際共同研究加速基金も戴き、海外研究機関との協力により、当初想定した以上の成果も得ることができた。具体的な成果として、①敗血症における全身性炎症と近位尿細管における尿生成障害との関係探索、②近位尿細管におけるTLR4 conditional-KOマウスを作成し、生体イメージングも導入したAKI解析、③tight junction破綻による腎間質内における体液の貯留、以上3点を明らかにした。①全身性炎症と局所における乏尿の関係を検討し、脾臓の高貪食活性単球群が細胞保護性、低貪食活性群が細胞障害性のサイトカイン産生を行っていることがわかった。これらのサイトカイン群に対する中和抗体による単一サイトカインへの処置では変化は得られなかった。②NDRG1陽性細胞におけるTLR4欠失モデルマウスの作製に成功した。このマウスにおいてはLPSによる乏尿がほぼ解消されており、内毒素症AKIにおける乏尿の誘導因子であると考えられた。しかしながら、糸球体ろ過量が著明に減少する重症度では、NDRG1:TLR4マウスにおける改善作用は消失していた。①に観られた結果は、このマウスにおいて減少していた。③国際共同研究により特に成果の出たものとして、LPSによる尿細管tight junctionの可逆的な破綻を確認した。これはTLR4阻害により遮断できるため、尿細管局所での乏尿形成メカニズムが確認された。また、AKI中のマウスでは、腎臓内水分塩分量の増大、間質内静止水圧の上昇が確認でき、尿漏出のエビデンスが得られた。これらの結果より、敗血症性AKIの初期では尿細管における細胞間隙からの尿漏出により乏尿が生じ、単球はこの作用と相互作用をしているが、完全に依存している結果ではなく、独立した作用があると考えられる。
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Anesthesiology
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10.1097/ALN.0000000000002214