研究課題
本研究では、ほぼ全てのがんを対象とした治療と診断を可能とする、がん組織へ高選択的に集積するセラノスティクス薬剤の開発を目指した。そのような目的を達成するため、最もがん選択的な蛋白の一つであるsurvivin (サバイビン)を標的とした薬剤開発を試みた。前年度までに新たな結合メカニズムにてsurvivinに結合性を示すペプチド誘導体の開発に成功した。本年度はさらに高親和性、高い代謝安定性を有するペプチド誘導体の開発を行った。その結果、特殊アミノ酸を導入した7-22残基の新規ペプチド誘導体がsurvivinに強い親和性を有することを見出した。また、高親和性ペプチドにFITCを導入した蛍光性ペプチドを開発して、HeLa細胞にて細胞内への集積を評価したところ、survivin蛋白の存在部位と相関した集積を示したことから、分子プローブとしての展開が可能であることが示された。また、いくつかの高親和性ペプチドに関しては、MTTアッセイにより優れた抗腫瘍活性を確認し、治療薬としても応用であることが確認された。続いて、survivinが細胞内蛋白であることから、survivin標的分子の細胞内への透過を試み、がん細胞選択的な膜透過ペプチドの開発を試みた。既存のがん細胞へ高選択的に毒性を示すSVS-1を母体ペプチドとして、SVS-1のリシン残基をアルギニン等の塩基性アミノ酸残基に変換し、ペプチド配列の長さも検討したところ、いくつかの誘導体ではSVS-1よりもKB細胞等のがん細胞への高い取り込みを示した。従って、今後はsurvivin結合分子と連結することで、in vivoにてsurvivinへ選択的に結合できる分子へと展開できるものと期待される。
2: おおむね順調に進展している
Survivin蛋白に高親和性を有する新たなペプチド分子の開発を達成した。いくつかのペプチド分子に関しては、survivinの発現に相関した細胞への集積を示し、抗腫瘍活性も有することも見出された。また、がん細胞へ高効率にて集積する新たな膜透過性ペプチドの開発にも成功した。
ナノ粒子等にsurvivin標的ペプチド分子を結合させ、90Yなどの治療用放射性核種、68Gaなどの診断用放射性核種、近赤外蛍光分子などを種々導入することで、新たながん選択的なセラノスティクス薬剤へと展開していく。
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