研究実績の概要 |
本研究ではほぼ全てのがんを対象とした治療と診断を可能とする、がん組織へ高選択的に集積するセラノスティクス薬剤の開発を目指した。そこで、最もがん特異的なタンパク質の一つであるsurvivinを標的とした薬剤開発を試みた。 本年度は、膜透過性および代謝安定性の高い新規survivin標的ペプチドの開発を目指し、アミノ酸置換体、r4誘導体、r9誘導体および環化体などのいくつかの誘導体を開発し、survivinに対して結合親和性を示す新規ペプチド分子を見出した。 また、膜透過ペプチドを導入したsurvivin結合分子のがん細胞を用いた抗がん作用を評価したところ、既存の低分子化合物 S12(Berezov, Oncogene, 2011)よりも高い抗腫瘍活性を有しており、survivin発現も減少したことから、survivinの退縮が抗がん活性に関与していることが示唆された。 続いて、EPR効果にてがん組織への高い集積性が期待される、金ナノ粒子にマレイミドを介してsurvivin標的ペプチドを導入した新規ナノ粒子型survivin標的分子の開発を行った。今後は詳細な構造、抗がん活性、in vivoでのがん組織への集積性などを評価していく予定である。 なお、Survivin標的ペプチド分子との比較およびSPECTイメージングへの展開を目指し、125I標識S12誘導体の合成および腫瘍への集積性などの評価を行ったところ、survivin陽性細胞への集積がsurvivin陰性細胞に比べて有意に取り込みが高いことが見出された。一方で、in vivoでの腫瘍への集積性やsurvivinへの選択性は不十分であり、腫瘍イメージング剤や内用放射線治療薬剤への展開にはさらなる検討が必要であることが分かった。
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