研究課題
本課題では、代表者が継続している基課題「胃癌悪性化におけるDDX27 発現亢進の機能的意義」を発展させてトランスレーショナルリサーチを実施するために、Hubrecht Institute(オランダ)のHans Clevers らと国際共同研究を行う。Cleversらは幹細胞培養技術を発展させ、各種臓器からの器官培養(オルガノイド)を成功させてきた。代表者は基課題において自分たちの発見した癌関連遺伝子DDX27のトランスジェニックマウス作製を目指している。作製されたトランスジェニックマウスからオルガノイドを樹立し、in vitroの培養系に移すことで、ハイスループットなシグナル伝達および薬剤感受性試験を行うことができると考えた。そのために代表者はまず、マウス臓器からのオルガノイド培養技術の取得に取り組んだ。その結果、これまでに4種類のトランスジェニックマウス系統から大腸および小腸のオルガノイド培養に成功した。通常、オルガノイドは個体内の微小環境を模倣したマトリゲルの中で3次元的に増殖する。代表者は、オルガノイド培養の応用としてミクロレベルの大きさであったオルガノイドを、ミリレベルの大きさにする培養方法をClevers GroupのNorman Sachsらとともに開発し、報告した。マトリゲル内ではそれぞれの幹細胞から独立して立体的なオルガノイドが増殖するが、我々は1型コラーゲン内で幹細胞を培養することで、それぞれのオルガノイドが融合しやすくなることを発見した。その結果、複数のオルガノイドから1本のチューブ(intestinal tube)のような構造を持つ融合体を作ることに成功した。このチューブは腸管を構成する未分化および分化細胞がほぼ全て含まれていることを確認した。つまり、インビトロの実験系として適していることが示された。
2: おおむね順調に進展している
今年度はまずオルガノイド培養技術の取得が目標であったが、技術を取得しただけで無く、新しい技術を共同開発し、報告するに到ったため、順調だと判断した。
引き続き、オルガノイド培養技術を発展させる。特に、オルガノイドはCRISPR/Cas9を用いた遺伝子編集が容易であるため、オルガノイドを用いた移植実験は将来汎用性が高いと考えられる。したがって、次年度は移植に適した培養系の開発を目指す。さらに、患者由来の組織から作製されたオルガノイドについて研究を進める。すでにClevers Groupでは大腸癌由来のオルガノイドが多数樹立されているため、それらを使って分子標的薬への感受性解析やシグナル伝達解析を行う。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 2件)
Development
巻: 144(6) ページ: 1107-1112
10.1242/dev.143933
Cancer Science
巻: 107(12) ページ: 1919-1928
doi: 10.1111/cas.13094
Cancer Research
巻: 76(9) ページ: 2612-25
10.1158/0008-5472.CAN-15-1846
Journal of Pathology
巻: 239(1) ページ: 97-108
10.1002/path.4706
巻: 107(4) ページ: 417-23
10.1111/cas.12892