研究課題/領域番号 |
15KK0352
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
田上 辰秋 名古屋市立大学, 大学院薬学研究科, 講師 (10609887)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2018
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キーワード | リポソーム / 吸入剤 / ドラッグデリバリースステム / スプレードライ / 肺疾患 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、個別化医療に向けた、機能性リポソーム製剤の吸入剤に関する研究を行うことである。今後、PM2.5などの大気汚染、高齢者化により、重篤な肺疾患にかかる患者数は急激に増加していくことが想定され、効果的な吸入剤の開発が求められている。生体適合性の高いリン脂質を構成成分とするリポソームは、ドラッグキャリアとして様々な研究が行われており、幾つかの疾患に対して注射剤としてリポソーム製剤が製品化されている。しかし、リポソームの吸入剤について、製品化されているものはない。
本研究は、主にリポソームなどの機能性ナノ粒子の調製において、比較的粒度分布の狭い、均一なナノ粒子を作ることができるナノ粒子製造装置を用いて、リポソームの調製を行った。粒子作成装置のパラメータ(流速、脂質濃度、有機溶媒)を変更させることにより、リポソームの粒子径を制御できることを見出した。
その後、リポソーム溶液をスプレードライヤーにより噴霧乾燥し、リポソームを含有する賦形剤マイクロ粒子(通称:ナノコンポジット粒子)の調製を行った。スプレードライヤーの条件(スプレー温度、賦形剤の種類、賦形剤/リポソーム比率)を変化させ、ナノコンポジット粒子を調製した。その後、ナノコンポジット粒子粉末に水を添加し、リポソームが、完全な形で再構成されるか、確認を行った。その結果、賦形剤および、スプレードライの温度が大きく影響し、いくつかの組み合わせにおいて、スプレードライ前後において、リポソームの粒子径、粒度分布がほとんど変化しない至適なスプレードライ条件を見出した。以上の結果から、以下のことが考察される。調製した吸入剤を実際に人に投与した場合、ナノコンポジット粒子が、肺に沈着し、その後、水分で溶解して露出したリポソームが完全な状態で存在する可能性が高いことが期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スプレードライヤーを用いた機能性吸入剤(リポソームなどのナノ粒子を含む、ナノコンポジット粒子からなる吸入剤)の開発において重要なことは、スプレードライ操作において、リポソームを噴霧乾燥しても、リポソームが完全な形で存在することであると言える。この点において、今年度、海外共同研究先で時間をかけて行った、スプレードライヤーによる条件検討で得られた結果は、意味のあるものであると思われる。
滞在期間が、限られていたため、当初予定した、検討項目をすべて行うに至ってはいない。また、日本に帰国してから行った方が、実験計画内容十分に検討できる項目があるということも明らかになった。このため、帰国後再検討し、作成したサンプルを、海外共同研究先で再分析するといった方法が、研究の効率化の面においてよいかもしれないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
重篤な肺疾患(COPD・肺がん)について患う割合は、高齢者の割合が多くなっている。しかし、調査を進めていくにつれて、そういった疾患を有する高齢者に吸入剤投与した場合において、患者の薬物動態に関する情報は、ほとんど存在しない、研究されていないことがことが明らかになった。臨床試験においてほとんどの患者は、健康な若い患者、もしくは、健康な高齢者である。高齢者は、加齢による身体的構造の変化、併存疾患による体内における重篤化、多剤併用による副作用の発現など、吸入剤の薬物動態を変化される様々な要因が存在する。本研究計画を進めていくについて、以上のことについて、調査する必要性があることに気づくにいった。従って、次年度の前半においては、詳細な文献調査を行う。
また、リポソームを含む脂質粒子を薬物を封入する際、薬物封入効率の改善が、製剤化において重要であるという認識に至った。また、粒子径を均一に制御することが薬物放出をコントロールするという点において、重要であると考えらえる。そこで、吸入剤に耐える均一なマイクロサイズの粒子の調製を行う。吸入剤において、個別化医療が必要な重篤な細菌(MRSA、緑膿菌、誤嚥性肺炎に関係する菌)を用いた評価、実験動物を用いた評価を行う。
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