今年度は、研究先で学んだリポソーム吸入剤に関する研究内容および知識を活かし、特殊なリポソーム吸入剤について基礎的な研究を行った。まず、はじめに多胞性リポソームとして知られるDepofoamを吸入剤として応用することを目指した。Depofoamは現在、注射剤として市販されている製剤であり、多胞性で数十マイクロメートルほどの巨大な粒子である。このため、吸入剤として応用するためには、サイズを小さくする必要がある。我々は、シラスポーラスガラス膜を用いて、ネブライザーで吸入できる程度の大きさに粒子径を調整することにより、Mini-Depofoamを作製した。調製方法を検討することにより、Mini-depofoamの粒子径に変化がみられることを確認した。また、Depofoamで見られた小胞構造はサイズを小さくしたMini-Depofoamにおいても確認され、多胞性を維持していることを確認した。また、吸入剤の薬物として抗結核薬であるリファンピシンを選択し、リファンピシンをリポソーム内に導入する方法として、リファンピシンを包接したシクロデキストリンを用いることにより、リポソーム内にリファンピシンを効率的に導入できることを見出した。 また、研究先で学んだ吸入デバイスに関する知識や現在のニーズを踏まえ、3Dプリンターを用いた研究についても、継続して行っている。子供用の吸入デバイスやより肺組織の深部にまで届くようなユニークな吸入デバイスのデザインを3Dプリンターで制作することが可能であると考えている。3Dプリンターを用いて患者に応じた粉末吸入剤の調製を試みたが、粘度制御や造形が非常に困難であり、また凍結乾燥した吸入剤においても分散性で課題が残った。このため、吸入剤に有用な知見を広げるため、他の粉末からなる剤形(錠剤)の基礎研究も合わせて行った。また、肺気管支構造に合わせたインプラントを造形した。
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