研究課題
新規家族性パーキンソン病原因遺伝子Coiled-coil-helix coiled-coil-helix domain containing 2 (CHCHD2) の疾患マウスモデル作製および評価法の確立のためCRISPE/Cas9システムをもちいてヒト神経芽細胞種培養細胞株のSH-SY5Y細胞のCHCHD2ノックアウト細胞 (以下SH-SY5Y CHCHD2 KO) を作製し、ミトコンドリアに着目した表現型の解析を実施した。オーストラリアシドニー大学/ロイヤル・ノース・ショア病院Kolling研究所Carolyn Sue教授の指導のもと、SH-SY5Y CHCHD2 KOの酸素消費量、ATP合成能、膜電位、酸化ストレス状態を評価した。その結果、SH-SY5Y CHCHD2 KOはコントロール細胞に比べ酸素消費量と定常状態のATP量および最大ATP合成能が著明に低下していた。一方、ミトコンドリア膜電位、およびスーパーオキシドや過酸化水素などの活性酸素が有意に上昇していた。さらに定常状態のATP量は野生型CHCHD2の過剰発現によって部分的にではあるが改善することが可能だったが、パーキンソン病患者から同定された変異型CHCHD2を過剰発現しても改善は観察されなかった。日本帰国後も共同研究を継続して実施するため、日本で樹立したCHCHD2変異陽性パーキンソン病患者由来iPS細胞についてMTA(Material Transfer Agreement:研究成果有体物移転契約)を締結し、日本から当該iPS細胞を輸出した。日本と同じ条件でiPS細胞を取り扱うために輸出したiPS細胞をもちいてKolling研究所所属の研究員にiPS細胞培養法を技術移転中である。
3: やや遅れている
当初オーストラリアシドニー大学での研究期間を平成28年8月から平成29年3月までとして計画し、平成28年4月より渡航のための準備を進めていたが、オーストラリア大使館から渡航に必要な職業研究ビザの発給が想定よりも大幅に時間を要し、平成28年9月19日に職業研究ビザが発給された。そのため、オーストラリアに渡航したのは当初より約2か月遅い10月4日となった。渡航後、研究施設の利用を開始するにあたり種々の事務手続きや遺伝子組換え実験等の講習の受講が必要であり、実際に研究に着手したのは平成28年11月からであった。したがって、当初の研究計画より2~3か月実施が遅れたため、計画していた研究が完遂できない可能性が高いため、研究期間の延長申請を行い、平成29年5月末までオーストラリアに滞在するように予定に変更した。実際の研究に関してはSH-SY5Y CHCHD2 KOがミトコンドリア機能に重大な影響を及ぼすことが明らかになり概ね順調に進んでいるが、地域的な問題が原因で研究に必要な試薬等が発注から納品まで最大2か月を要する物品もあり、予定通りに進んでいない解析も一部存在する。
本研究で得られた結果を繰り返し検証することで再現性を取ると同時に得られた表現型がどのような分子メカニズムによって起きているかをウエスタンブロットや定量PCRなどで検証する。また、帰国後も引き続き国際共同研究を推進するため、情報交換や試料の提供を継続する。帰国後に日本でも同様の解析を可能にするため実験系を構築する。これをもちいてオーストラリアで得られた結果の再現性を取り、実験系の検証を行う。その後CHCHD2ノックアウトマウス組織およびマウス胎児線維芽細胞をもちいてミトコンドリア機能評価を実施し、新規モデルマウスの評価法を確立する。本研究の成果の一部は平成29年9月に京都で開催するWorld Congress of Neurology - Kyoto, 2017および平成29年10月にオーストラリアで開催する12th Annual Meeting of the GEoPD Consortiumにて発表予定である。
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