研究課題/領域番号 |
15KK0356
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研究機関 | 松本歯科大学 |
研究代表者 |
中道 裕子 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 講師 (20350829)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2018
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キーワード | プロテオーム / ゲノム / シグナル伝達 |
研究実績の概要 |
(1)Rykシグナルのプロテオーム解析 Rykのリガンドの一つであるWnt3aに対する応答について、C3H10T1/2, ST2, C2C12細胞を用いて骨芽細胞の分化指標であるアルカリフォスファターゼ活性の比較により解析した。まず、これまで我々がルーチンで用いているアルカリフォスファターゼ基質は蛍光を持たず、可視光明視野での青色発色により活性を測定していた。偶然にも感度がよくかつ可視光も蛍光でも観察可能な基質があることを見つけ、この基質の有用性について検討した。明視野で形態観察に加え、蛍光プレートリーダーでの活性の数値化が可能となるからである。この基質を用い、上記3細胞におけるWnt3aの用量と処理時間依存的なアルカリフォスファターゼ活性の上昇を調べた。Wnt3aは、ST2細胞とC3H10T1/2細胞においてアルカリフォスファターゼ活性とWntシグナルレポーター遺伝子の活性を用量と処理時間依存的に上昇させた。一方、Wnt3aは、C2C12細胞においてWntシグナルレポーター遺伝子の活性は上昇させたものの、アルカリフォスファターゼ活性は、上昇させなかった。したがって、プロテオーム解析ではST2細胞とC3H10T1/2細胞において共通にシグナルが上昇または下降したタンパクを見つけ、その中からC2C12においてシグナルが上昇または下降したタンパクを差し引く予定である。プロテオーム解析は、リン酸化ペプチド質量分析と multiplexed kinase inhibitor beads を利用した質量分析の2種類の方法で行う予定である。multiplexed kinase inhibitor beads は、活性化状態のリン酸化酵素を捕獲する方法である。 (2)ゲノムワイドのRykシグナル下流遺伝子機能解析を行っている。遺伝子機能解析のため、CRISPR-Aライブラリーを用いている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)プロテオーム解析においては、比較条件決定、実験のデザインが順調に出来た。また、当初は予期していなかったが、偶然にも定量解析と形態学的解析の双方に適している感度の高いアルカリフォスファターゼ基質を見つけることが出来た。従って、機能解析も当初の予想よりは時間と労力を節約出来かつ、発現レベル依存的な定量性のある再現性の高いデータが得られるものと確信しているため。 (2)遺伝子機能解析については、プロテオーム解析でヒットしたタンパク質の機能を通常の過剰発現システムを用いて調べる予定であった。CRISPR-Aライブラリーシステムは、本研究を計画した時点ではまだ入手可能ではなかった。しかし、現在は入手可能なのでこの手法を取り入れることにした。しかし、現在のところ自作したレポーター遺伝子や発現システムは確実に働いているが、スクリーニング時点でのシグナルノイズ比を下げるための条件検討が必要であるため。
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今後の研究の推進方策 |
(1)プロテオーム解析と(2)ゲノムワイド遺伝子機能スクリーニングの双方でヒットした因子についてリストを作成し、双方の解析方法の相関性について検証する。 (1)と(2)の双方の方法においてシグナルの高かった因子を重点的に機能解析を行う。 方法としては、個々の遺伝子のCRISPRによる遺伝子KO細胞とCRISPR-Aによる遺伝子過剰発現細胞を作製し、Wntシグナルのどの段階を目的遺伝子が調節しているかを調べる。現在のところ、ST2細胞において内在性のWntシグナルのため、レポーター遺伝子が常にonなのでスクリーニングのノイズが高くなってしまう状態にある。現在、基底状態でのレポーター活性を下げるための条件検討中であり、スクリーニング用培地の組成を変えたり、薬剤を加えることで改善の余地があるので、それを試みている。
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