研究課題/領域番号 |
15KK0357
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
濱 進 京都薬科大学, 薬学部, 講師 (60438041)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2018
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キーワード | ドラッグデリバリーシステム / 腫瘍微小環境 / がん幹細胞 |
研究実績の概要 |
基課題において、微小環境応答性および組織透過性を有する核酸キャリアーCTR-SAPSPリポソームを開発中である。CTR-SAPSPリポソームは、高い組織透過性が期待できるため、血管から離れた領域の腫瘍深部を標的とすることが可能である。一方で、本キャリアーを基盤としたナノメディシンは、腫瘍深部に存在するがん幹細胞(Cancer stem cell: CSC)に対する殺細胞効果は低いと予想される。このCSCは既存の治療法に対して耐性を示すだけでなく、増殖および転移の核となるため、現在CSCを標的とした治療法の開発が求められている。そこで、本課題では、CSCに対して高い殺細胞効果を有するシクロスパミン(CYP)をCTR-SAPSPリポソームへ搭載することで、CSCに対しても高い治療効果が期待できるリポソーム型核酸キャリアーを開発することを目的としている。2017年3月より、海外共同研究者のJindrich Kopecek博士の研究室において、リポソーム型核酸キャリアーへ搭載可能なCYP誘導体の合成に着手している。当初計画していたCYP誘導体は、リポソーム膜挿入可能なステアリン酸とCYPを酸性オルガネラ内酵素切断ペプチドGFLGによって連結させた構造であったが、CYPの脂溶性が高く、リポソームへの表面提示が困難であると考えられたため、新たなCYP誘導体であるCYP-LE-Aktinをデザインした。CYP-LE-Aktinを搭載したCTR-SAPSPリポソームは、がん幹細胞の増殖に関与するHedgehogシグナル経路とAkt-mTORシグナル経路の両方を阻害することで、当初の計画でデザインしたCYP誘導体に比べて、CSCに対して高い殺細胞効果が期待できると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
リポソーム型核酸キャリアーへ搭載可能なCYP誘導体は、CYPにリポソーム膜挿入可能なステアリン酸と酸性オルガネラ内酵素切断ペプチドGFLGから構成されており、2017年3月に渡航後、ステアリン酸とCYPのリンカーでもあるGFLGの合成に着手した。その一方で、CYPの脂溶性が高く、リポソームにCYPを表面提示させることが困難なことから、新たなCYP誘導体のデザインを現在行っている。
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今後の研究の推進方策 |
CYPの難水溶性の問題は、CYPをリポソーム膜に搭載することで解決する。またCYPはHedgehogシグナル経路の阻害を介して、CSCに対して殺細胞効果を示すが、CSCの増殖には、Hedgehogシグナル経路とAkt-mTORシグナル経路の両方が関与していることから、CSC の増殖をより効果的に抑制するためには、Akt-mTORシグナル経路も同時に阻害する必要がある。そこで、水溶性のAkt阻害ペプチドAkt-in (AVTDHPDRLWAWEKF)とCYPを酸性オルガネラ内酵素切断ペプチドGFLGによって連結させた(CYP-LE-Aktin)を合成する。CYP-LE-AktinをCTR-SAPSPリポソームに搭載した場合、CYPがリポソーム膜に挿入され、LE-Aktin が表面提示された構造を有すると考えられ、本リポソームがエンドサイトーシス経路で取り込まれた後、リソソーム内酵素でGFLGが切断されることで、Aktinが細胞内に放出される。そのため、CYP-LE-Aktinを搭載したCTR-SAPSPリポソームは、Hedgehogシグナル経路とAkt-mTORシグナル経路の両方を阻害可能であり、当初の計画でデザインしたCYP誘導体に比べて、CSCに対して高い殺細胞効果が期待できると考えられる。
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