研究課題/領域番号 |
15KK0357
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
濱 進 京都薬科大学, 薬学部, 講師 (60438041)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2018
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キーワード | 腫瘍微小環境 / がん幹細胞 / DDS |
研究実績の概要 |
基課題において、微小環境応答性および組織透過性を有する核酸キャリアーCTR-SAPSPリポソームを開発した。本研究は、CTR-SAPSPリポソームの高い組織透過性に着目し、血管から離れた領域の腫瘍深部に存在するがん幹細胞を効果的に死滅可能なナノメディシンを開発することを目的としている。がん幹細胞の生存維持には、Hedgehogシグナル経路とAkt-mTORシグナル経路の両方が関与していることから、両経路を効率的に阻害可能なナノメディシンの設計が必要である。Hedgehog経路阻害剤は、細胞膜上のSMOと相互作用する必要がある一方、Akt-mTOR経路阻害剤は細胞質に作用部位があるため、両阻害剤を最適な場所、すなわち細胞外と細胞質で放出可能な2つのペプチド誘導体をリポソームに搭載することを着想した。1つ目のペプチド誘導体は、Hedgehog阻害剤のシクロパミンの水溶性誘導体であるIPI-926に低pH応答性ペプチドSAPSPを連結させたものであり、細胞外低pHに応答してIPI-926が細胞外で放出されることが期待でき、現在合成中である。2つ目は、リポソームが細胞内に取り込まれた後、ライソソーム内酵素のカテプシンB切断配列LECとAkt阻害剤を連結させたペプチドであり、渡航先において、本ペプチドにリポソーム挿入基のステアリン酸を付加したStearyl-LEC-Aktinを設計・合成し、リポソーム化可能であることを確認した。また、研究期間中にCTR-SAPSPリポソームを用いたがん幹細胞への薬物送達に有用な新たなデバイスも開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リポソームに搭載予定の2つのペプチド誘導体のうち、1つは既に合成済みであり、リポソームに搭載可能であることを確認できている。もう1つの誘導体に関しても、現在共同研究者と協議しながら合成を進めており、早期に目的とするナノメディシンを開発可能な状況にある。また、ナノメディシンのがん幹細胞に対する効果は、Tumorsphere形成能によって簡便に評価可能であることも見出しているため、その機能性を迅速に評価可能な状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
Stearyl-LEC-Aktin を搭載したリポソームの機能性は、Tumorsphere形成能およびELISA法によって評価するとともに、蛍光標識体を用いて、細胞質でAktinが放出されていることを共焦点レーザー顕微鏡観察によって評価する。SAPSPを連結させたIPI-926の合成を迅速に進めるとともに、その機能性を上記と同様にして評価することで、期間内にがん幹細胞を効果的に死滅させることが可能ナノメディシンを開発する。
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